白血病を短期間で克服し、ついに不可能と言われていた東京五輪出場まで実現。池江璃花子選手は、いまや日本中に勇気を与える存在となった。だが、その彼女がひとり不安の中で闘っていることを我々は知らない。
「生きててよかったと素直に思います」
7月4日、この日21才の誕生日を迎えた池江璃花子選手は喜びをこう表現した。池江選手は400mリレーの五輪代表チームの一員として、神奈川県相模原市で行われた記録会に出場。非五輪種目の200mリレーで、チームは日本新記録を樹立した。池江選手は第2泳者として出場し、快挙に貢献している。
チームが東京五輪に向けて弾みをつけた一方で、池江選手は人一倍大きなリスクを抱えながら本番を迎えようとしている。要因はいまだ収束の見えない、新型コロナウイルスだ。
6月28日、日本オリンピック委員会の山下泰裕会長(64才)は、会見で「日本の選手、候補選手たちのワクチン接種に関しては、95%くらいがすでに1回目のワクチンを打っている。95%はかなり高い数字」と強調した。ワクチンは感染予防の安心材料ともいえるが、池江選手には当てはまらない可能性があるのだ。
池江選手の白血病が発覚したのは2019年2月のことだった。
「入院生活は当初の予定よりも長引き、約10か月に及びました。抗がん剤治療による抜け毛や吐き気にも苦しめられ、体重は入院前より15kgも落ちたそうです」(スポーツジャーナリスト)
その苦しみは、池江選手がのちにテレビ番組で、「(当時は)死んだ方がいいんじゃないかって思っちゃったときもありました」と語ったほどだ。2019年12月に退院するも、競技復帰など考えられる状況ではなかった。
「昨年3月、池江さんは406日ぶりにプールに入ることができました。しかし最初は水に顔をつけることも許されない状態からのスタートでした。そればかりか、ほんの少しの練習ですぐに息苦しくなってしまい、再起への道のりはなかなか順調には進まなかったようです」(前出・スポーツジャーナリスト)