それらの言葉が、目の前のことに必死になっているとき、少し引いた目で眺めるひと呼吸へと繋げてくれるのです。
そして、それぞれの登場猫たちは自分で自分の道を決めていき、さらに自分自身で幸せになる努力をしています。
《幸せだねぇ》
《ありがとう》
《大好きよ》
作中にたびたび出てくるこのセリフ。猫たちは相手に素直な気持ちを伝えることを大切にしています。それはまるで、幸せか幸せじゃないかは、受け取る自分次第だよと言っているように感じられるのです。
そんな素直な猫たちをみて、みんな人生の通過点で偶然同じ場所に居合わせただけの関係だけれど、人と人とが出会って関わるのって素敵だなぁとしみじみしたのでした。
短いスパンで見ると、同じようなことの繰り返しで、すこしずつ時が流れて年齢が積み重ねられていく。振り返ってみると、その日々たちは、情けないけど愛おしくてかけがえのない日々だったと気付かされます。
ふと、誰かが「人生は大喜利」と言っていたことを思い出しました。同じ状況でも、その場にいる人の解釈でおもしろくなったり、悪くなったりする。小さな笑いをたくさんあつめて人生を振り返った時に「たくさん笑った~」と、満足していたいなと私は思うのです。
私にとっての「幸せ」は、「こどもや身近な人と笑っていること」。そう考えるきっかけを与えてくれた漫画でした。
【プロフィール】
えがしらみちこ/絵本作家。1978年、福岡県生まれ。『あめふりさんぽ』、『いろいろおてがみ』など手掛けた作品は多数。現在、静岡県三島市にある絵本専門店「えほんやさん」の代表を務める。
※女性セブン2021年7月22日号