「私たちが光浦靖子さんに憧れる理由は、彼女の人生を見てきたからです。芸能界で独自の地位を築き上げ、実績を出す。雑誌やラジオ番組でお悩み相談に真摯に向き合い、時には厳しいコメントもする。憤りや悲しみ、世間とのズレについて赤裸々に綴り、趣味の手芸に没頭し、セカンドキャリアを見据えて留学に旅立つ。よく働き、よく学び、よく遊び、よくよく考えて、プロとして活躍し続けてきた、かっこいいおばさん。慕われるのは当然です。
一方で私たちは、日本社会がそんな彼女をどう扱ってきたかも、ずーっと見てきました。バラエティ番組でブスと罵られ、まだ発言の途中なのに言葉をさえぎられ、調子に乗るなと笑われる姿を見て、『自分と同じ壁に阻まれている』と感じる女性も多いはずです。だからこそ彼女が望む通りの生き方を応援したくなるのです」(岡田氏)
岡田氏は、光浦の最新エッセイ『50歳になりまして』で語られたエピソードのひとつが印象に残っているそうだ。それは、普段大人を「○○くんのお父さん/お母さん」というふうに呼んでいる近所の子どもたちが、独身子なしの光浦をなんと呼ぶべきかわからず、「お母さんじゃないもう一人の人ぉ」と声をかけてきたというものだ。
「結婚せず子供もいない働く女性は今まで、呼び方すらわからない『謎の人』であり、お手本も黒柳徹子さんくらいしかいませんでした。しかし非婚化が進む現代では、インディペンデント(自立した)な女性はどんどん増えていきます。世間の認識のほうが変わっていく時代だと思いますよ」(同前)
全ての女性がキラキラした美人側として生きているわけではない。容姿に心無い言葉をぶつけられたり、「女」としての生き方に悩んだりした経験のある人々だって大勢いるはずだ。そんな女性たちにとっては、周囲にイジられるポジションでありながら、縮こまることなく自分を貫く光浦は理想像となりえるのだろう。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)