東京五輪には24歳以下の選手が出場している。現在、地上波でJリーグ中継はほとんどなく、海外リーグの選手たちもスポーツニュースで少し登場する程度。一般的には、選手の名前はあまり浸透していない可能性もある。南アフリカ戦、メキシコ戦ともアナウンサーは主に名前だけを言っていた。
ただ選手名を呼ぶだけでは、視聴者はすぐには覚えられない。松木氏はそんな気持ちを考慮して、いつも『7番の久保選手』などと背番号も加えている。そのほうが頭に残るからだ。解説のみならず、アナウンサーの役割まで担っているのだ。
初戦の南アフリカ戦では審判が日本に不利な判定をしているように見え、森岡氏もヒートアップするほどだった。もし松木氏が解説をしていたら、どんな言葉を発していたのだろうか。
仮に南アフリカがファールを取られ、VTRで明らかに日本のファールと見えた場合を考えてみよう。おそらく松木氏なら『10回くらい日本に不利な判定されてますからね、今のは相手のファールでいいでしょ』とぶっきらぼうに突き放したのではないか。
日本の男子サッカーは28日のフランス戦を含め、最大残り4試合ある。五輪ではNHKと民放各局が共同制作しているため、テレビ朝日の中継でなくても松木氏の解説を聞ける可能性はある。「やった、やった!」と松木氏の絶叫が日本中に響き渡る日は訪れるか。
■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記』(青弓社)では1998年フランスW杯直前にメンバー落ちした三浦知良の帰国後、親友の田原がどう接したかも記している。