新世代のエース後藤はリリーフ登板し、勝利も(メキシコ戦時)
スポーツファンなら、アスリートたちがそうコメントするのを一度は耳にしたことがあるだろう。ただ、ありきたりな言葉かもしれないが、彼女が口にすると、言葉の重み・価値が格段に増す。
仕事柄、普段はプロ野球選手をインタビューする機会が多いが、振り返ってみると長く現役生活を送った選手たちは、漏れなく、競技を──彼らの場合は野球を──楽しむことが大切だと言っていた。
数々の最年長記録を打ち立てた山本昌も、現在40歳にして福岡ソフトバンクホークスの先発ローテーションに名を連ねる和田毅も、「野球が好き」であることが、長く現役生活を続ける要因だと語っている。
もちろん、モチベーションの核となる感情は、「スポーツを楽しむ心」だけではない。
逆境を跳ね返すハングリー精神が求められることもあるだろう。ライバルに負けたくない気持ちや、ミスをしてしまった悔しさ、また場合によっては、自分のポジションが奪われてしまうかもしれないという強迫観念が、自分を奮い立たせる要因となることがあるかもしれない。
ただ、そういうどちらかと言うとネガティブな感情による動機づけには限界がある。競技生活で何度も頂を極めた後、さらに別の頂を目指し続けるトップアスリートたちを最終的に支えるのは、ポジティブな感情に裏打ちされた動機付けなのだ。
42歳まで現役を続けた千葉ロッテマリーンズ井口資仁監督も、今年上梓した著書の中で、選手のモチベーションのコアとなる感情について、ライバルへの対抗心などの有効性を認めつつも、「野球を楽しめる感情が最強」と言い切っている。
ソフトボールが好き──。
投げることが楽しい──。
残るのは、世界ランク1位米国との一戦のみ。
「明日の一戦は、悔いのないように楽しめたらいいなと思っています」
上野には一瞬でも長く五輪のプレーを楽しんでもらいたい。
取材・文/田中周治(スポーツライター)