「夢の大橋」に設置された聖火台の観覧自粛を呼びかける貼り紙。7月25日(時事通信フォト)
「海外の五輪関係者がIDカードをぶら下げて飲みに来ている居酒屋もあり、びっくりしました。感染が怖いけど、お酒は飲みたいというのは世界共通なんでしょう」(赤木さん)
一説によれば、江戸時代に誕生し一気に拡大した「居酒屋」の文化は、出稼ぎや奉公で働く独り身の男たちだけでなく、幕府の参勤交代で地方から単身赴任してきた男たちを相手に始まったと言われる。それから数百年が経ったいまも、現代版の参勤交代でやってきた応援上京組が居酒屋にひっそりと集っているというのか。
「会社やグループ企業がホテルを借り上げています。以前なら、こういうときは誰かの部屋に集まったりしたものですが、部屋で騒いでいたり、部外者を部屋に招き入れると大変な騒ぎになりますよ」
と、応援のための上京暮らしが以前のようではないという様子を話してくれたのは、関西地方からでやってきている警備関連企業勤務・迫田大輔さん(仮名・50代)。
「一部には、感染なんかどうでもよくて、束の間の単身赴任気分を楽しんでいる奴らもいます。ホテル内で騒いで問題になり、もう外でしか飲めないなんて言いながら、嬉しそうに毎夜出て行っていますよ。田舎に帰れば、居酒屋はおろか外で飯を食う機会もない。飲みに行ってお姉ちゃんの店でシメる、なんて今の時期、この東京でしかできないでしょうから」(迫田さん)
選手や関係者の感染ばかりが報道されているが、いくら無観客とはいえ、五輪関連の仕事で応援上京している人たちも何万人、何十万人と膨れ上がっている可能性がある。その人たちへのケアをおざなりにしていれば、五輪後に払うツケはどれほど大きくなってしまうのか。感染者数が過去最多を記録した東京だが、もはや「お願い」などでは誰も聞かない。さらに強制的な措置が必要なタイミングかもしれない。