「小説ってどうやって書くんだ? とかいう感じなのに、いきなり毎週更新で。テレビの世界は必ず納期があるじゃないですか。間に合わないと死、みたいな感じだったので、締切に合わせて必死に書いていたんですけど、いま思うと休載している人もいっぱいいたんです。業界が違えばやり方も違うのに、そういうことも全然わかっていなかった。
40過ぎて、テレビの仕事でようやく怒られなくなってきて、ああ今日は穏やかだったなあという日も出てきたときに、書くことを始めたら、まあ怒られるわけですよ。編集者が今週の人気ランキングをわざわざPDFで送ってきて、もっと刺激的なコピーつけて、っていうんで刺激的なコピーつけたら、『看板倒れだ』みたいなコメントがバンバンつく。もう行き場がないな、って(笑い)」
淡々とボヤきながらも、周囲の求めに応じて才能を発揮し続ける燃え殻さんである。
「ボクはほんとに辞め下手なんです。バイトも続いちゃう。昔、エクレア工場で働いていたときも、『おまえだけだぞ、こんなに続くの』って言われてました(笑い)。工場長が怖すぎて、辞めるって言えないだけなのに」
『ボクたち……』を書いたとき、もう小説を書くこともないだろうと思って、本の打ち上げの席で、「気がすんだ。いい人生だった」と話して、「そんな感じでまとめるの、やめてもらっていいですか」と担当編集者にたしなめられたそうだ。
自分の言いたいこと、書きたいことのすべてを入れたというデビュー作は、Netflixで映画化されて、今秋、世界中に配信予定だ。
「大勢に読んでもらえてもちろんうれしいんですけど、『小説の体をなしてない』とかってAmazonのレビューで書かれたりもしました。『なるほどー』って勉強になることもありますけど、怖いのであまり見ないようにしています。
Twitterで悪口書いているアカウントを見たら、すげえ若い子なんですよ。『体育祭嫌だなー』とか呟いてる合間にボクの本の悪口言ってるのがもうショックすぎて。『ボクも体育祭、嫌だったよ』ってリプライしようかと思いました(笑い)」