芸能

三遊亭王楽 人柄から出る素直な演出で豪華ゲストの十八番に挑む

三遊亭好楽の長男、三遊亭王楽の公演(イラスト/三遊亭兼好)

三遊亭好楽の長男、三遊亭王楽の公演(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、『笑点』大喜利メンバーとしておなじみの三遊亭好楽の長男、三遊亭王楽による7日連続公演についてお届けする。

 * * *
 三遊亭王楽が6月7日から13日まで「芸歴20周年記念独演会7days」と題して7日連続8公演を池袋・東京芸術劇場シアターウエストで行なった。初日は父の三遊亭好楽と二人の息子が共演する“親子三代の会”という趣向。以降は8日が立川談春、9日が笑福亭鶴瓶、10日が春風亭昇太、11日が立川志の輔、12日は昼が春風亭小朝で夜が春風亭一之輔、13日が桂文枝と、毎回豪華ゲスト陣を迎えている。

 中でも興味深かったのが、談春をゲストに迎えた会だ。談春は2004年11月、この会場(当時は東京芸術劇場小ホール2)で“二十年目の収穫祭”と銘打った三夜連続の「大独演会」を行ない、その後の飛躍のきっかけとした。まだ二ツ目になりたての王楽はそれを見て「自分も20周年をここで迎えたい」と思ったのだという。

 今回のイベントで王楽はゲストの十八番に挑むというテーマを掲げ、自身が二席演じるうちの一席をネタ出しした。小朝なら『三枚起請』、志の輔なら『帯久』、鶴瓶なら『らくだ』といった具合だ。談春の十八番からは、なんと『庖丁』。談志が「俺より上手い」と談春を絶賛した演目であるだけでなく、王楽の大師匠に当たる六代目圓生の十八番。一門が大事にしているお家芸だ。

 色悪の久次が脇に若い女ができて女房が邪魔になり、仲間の寅に女房を口説かせて現場に踏み込む作戦を立てるが、寅が裏切って久次が追い出される羽目になる『庖丁』。もとは音曲噺で、酔った寅が小唄“八重一重”を口ずさみながら強引に口説こうとして手ひどく拒絶されるのが見せ場。王楽はこの勘所を外さず、身持ちの堅い女房に歯が立たない寅の情けない姿を強調した。

 亭主の悪だくみを知って悔し泣きする女房を覗き見た久次が「あの野郎、俺のカカァを泣かせやがって!」と腹を立てる演出は他で観たことがないが、王楽には似合っていて楽しい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「従業員の人が驚くといけないから…」田村瑠奈被告が母・浩子被告に告げた「殺害現場のホテルをキレイにした理由」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
年末恒例行事の餅つきに参加した特定抗争指定暴力団山口組の篠田建市(通称・司忍)組長(中央)ら。2024年12月28日、愛知県瀬戸市(時事通信フォト)
《司忍組長の誕生日会では「プラチナ」に注目集まる》暴力団にとっての「代紋」、つけないケース増える「最近では名刺にも…」
NEWSポストセブン
浩子被告の主張は
「すごい、画期的だ…」娘・田村瑠奈被告と被害男性の“初夜”の日、母・浩子被告が夫に送っていた「驚嘆LINE」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
怒り心頭のマツコ
《所属事務所社長の失踪で“消えた大金”》マツコ・デラックス“年収7億円”“20億円”説に「本当の金額はかけ離れている」と猛反論 
女性セブン
新証拠が明らかに(左は共同通信)
「深夜3時に猛ダッシュ」大木滉斗容疑者(28)の“不可解な奇行”を捉えた新証拠とエリート大学生時代の“意外なエピソード”《東大阪バラバラ遺棄》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「1000人以上の男性と関係を持った」金髪美人インフルエンサー(25)が“乱倫パーティー動画”削除の大ピンチ《世界に波及する“奔放な女”の影響力》
NEWSポストセブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《過激ファッション》カニエ・ウェストの17歳年下妻、丸出しドレスで『グラミー賞』授賞式に予告なく登場「公然わいせつ」「レッドカーペットから追放すべき」と炎上
NEWSポストセブン
女性皇族の健全な未来は開かれれるのか(JMPA)
愛子さま、佳子さま“結婚後も皇族としての身分保持”案の高いハードル 配偶者や子供も“皇族並みの行動制限”、事実上“女性皇族に未婚を強制”という事態は不可避
女性セブン
第7回公判では田村瑠奈被告の意外なスキルが明かされた(右・HPより)
《モンスターに老人や美女も…》田村瑠奈被告、コンテストに出品していた複数の作品「色使いが独特」「おどろおどろしい」【ススキノ首切断事件裁判】
NEWSポストセブン
『なぎチャイルドホーム』の外観
《驚異の出生率2.95》岡山の小さな町で次々と子どもが産まれる秘密 経済支援だけではない「究極の少子化対策」とは
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
【独自】《水原一平、約26億円の賠償金支払いが確定へ》「大谷翔平への支払いが終わるまで、我々はあらゆる手段をとる」連邦検事局の広報官が断言
NEWSポストセブン
浩子被告の主張は
《お嬢さんの作品をご覧ください》戦慄のビデオ撮影で交わされたメッセージ、田村浩子被告が恐れた娘・瑠奈被告の“LINEチェック”「送った内容が間違いないかと…」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン