ビジネス

コロナ禍の五輪後も都心や湾岸エリアのマンション価格が下がらない根本的な理由

大規模マンションの開発が相次ぐ豊洲の街並み(江東区/時事通信フォト)

大規模マンションの開発が相次ぐ豊洲の街並み(江東区/時事通信フォト)

 止まらぬコロナ禍の中で開催されている東京五輪。大会後には経済は失速、マンション価格も下がるのではないかとみる向きが少なくないが、どうやらそうとも限らない。都心の超高層マンションを中心に価格は高止まりを続け、「希少性の高い物件はむしろ価格が上がりそうな気配」と予測するのは、住宅評論家の山下和之氏だ。

 * * *
 1964年の東京オリンピックの直後、競技施設やインフラ建設などのオリンピック需要の反動で景気は大きく後退した。2016年のリオデジャネイロ五輪後のブラジルもそうだった。

 しかし、わが国の社会・経済構造は60年近く前と今では大きく異なっているし、開発途上国のブラジルの例もあまり参考にならない。

五輪後の「反動減」は考えにくい

 社会・経済の熟成が進んでいるわが国では、オリンピックのために新たに建設されたのは国立競技場などの一部の施設で、道路などの社会インフラの建設はほとんど必要なく、オリンピック需要が小さかった反面、反動も少なく、景気後退の懸念は小さいといわれている。リオの前のロンドンもやはりそうだった。

 むしろ、現在は世界的にみるとポストコロナによる経済回復が期待されており、2021年度のわが国のGDPについて、政府は3.7%の成長を見込んでいる。欧米先進国に比べると水準は低いものの、比較可能な1995年度以降では最大の伸び率になる。

 それだけに、社会・経済的な要因がマンション市場にマイナスの影響を及ぼすとは考えにくい。

新築マンションの原価は上がりつつある

 新築マンションの価格は土地の仕入れ値と建築費、それに分譲会社の経費や利益を合わせた原価を分譲住戸に割り振って算出される。その原価となる地価と建築費の高い状態が続いている。

 地価はコロナ禍の影響で2020年に若干下がったものの、2021年に入って上昇に転じ、コロナ禍前の水準に戻りつつある。

 マンション適地となる大都市の駅前や繁華街などの高度利用地の地価について、国土交通省が四半期ごとに調査を行っているが、コロナ禍直後には全国の多くの地点で「下落」となったものの、2021年4月調査では、いち早く「上昇」地点が「下落」地点を上回っている。

 マンション分譲会社の土地仕入れ担当者によると、「一時は最大のライバルのホテル業者の入札がなくなったが、最近では復活傾向にあり、コロナ禍前の水準か、それ以上でないと落札できなくなっている」としている。

 建築費も鋼材や木材などの仕入れ値が上がっていて、特に大手ゼネコンは受注価格を引き上げる傾向が強まっている。

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン