離脱症状が生じる薬もやめられる
薬のなかには、長期間服用してきたために、断薬・減薬することで痛みが生じたり、震えや不眠などの離脱症状が生じる薬がある。前者は鎮痛剤、後者は睡眠薬・抗うつ剤といった向精神薬が代表で、いずれも広く処方されている。
こうした薬の断薬・減薬のポイントは、「2~4週間ごとに徐々に減薬」「服用期間が長いほど時間をかける」「多剤併用の場合、副作用の原因薬や危険性が高い薬から減らす」などであるが、自己判断で行なうと離脱症状に耐えられず、減薬に失敗する患者も多い。「薬やめる科」の強みは、そうした症状を緩和するために、西洋医学にとらわれない統合医療的な代替療法も治療に取り入れていることだ。
代替療法を取り入れる目的の一つに「腸内フローラの改善」がある。
「大腸、小腸には100兆以上の腸内細菌が存在して腸内フローラを形成し、人体の免疫の7割を司っています。睡眠と関わるセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質も小腸で作られ、乳酸菌が不足すると十分に産生できません。腸内細菌には善玉菌も悪玉菌もなく、大腸菌でさえビタミンBを生成する役割を持っていて、重要なのはバランス。腸内環境を改善して薬がいらない体を目指します」
「薬やめる科」では代替療法の一つとして「矢迫インパクト療法」という注射を行なっている。
「元々はアレルギー疾患の治療法として用いられていたが、繰り返し行なうことで体温が上昇し、免疫や排毒の機能を高めるとされています。
体温が1度下がると免疫は3割低下し、逆に1度上がると5~6倍に上がるといわれています」
ほかに東洋医学の手法も導入している。脊椎、骨盤、仙骨から脊椎神経が伸びてあらゆる内臓に分布しているので、東洋医学ではこのズレが万病の元と考えている。
そこで、筋肉・骨格のアンバランスを調整するため、鍼灸治療をはじめ、音で治療するサイマティクスセラピーなど様々な代替療法を組み合わせて治療している。
「こうした診療は原則2週間に1回ですが、遠方なら月1回でも大丈夫です。そのため、診療以上に食生活改善や運動などセルフケアが重要になってきます。大事なのは楽しく続けることです。1日2食と決めていたのに3食も食べてしまったとか、睡眠時間が確保できなかったとかで、自分を責めたりしないこと。よく眠れなかったからといって、睡眠薬で睡眠時間を確保しようなんて考えも捨てましょう」
薬との向き合い方を見直せば、人生が変わる。
【プロフィール】
松田史彦(まつだ・ふみひこ)/1962年生まれ。聖マリアンナ医科大卒業。1997年に東京女子医科大学附属東洋医学研究所に勤務し、東洋医学と漢方に出会う。2000年に松田医院和漢堂を開院。
※週刊ポスト2021年8月20日号