ライフ

ナマズが暴れる、イワシ大漁… 動物の「異常行動」は大地震の前兆なのか

ナマズと地震の関連は古くから信じられていた(大工がナマズを接待する風刺画/国際日本文化研究センター所蔵)

ナマズと地震の関連は古くから信じられていた(大工がナマズを接待する風刺画/国際日本文化研究センター所蔵)

 古くから日本では「ナマズが地震を起こす」と信じられてきた。実際に、ナマズと地震の関連性は科学的な研究が積まれてきたという。日本地震予知学会会長で、東海大学海洋研究所客員教授の長尾年恭氏はこう話す。

「1976~1992年の16年間、東京都水産試験場はナマズの行動を調査し、東京都で震度3以上の地震を観測した10日以内にナマズが異常行動を起こした割合は31%だったと報告しました。

 ただし、異常行動の判定基準を変更すれば結果が変わるとの指摘がありました。その他の研究結果を見ても、関連性を証拠づける満足な結果は得られているとは言い難い」

吉村昭がレポートしていた、3.11でも観測された「イワシの大漁」

 東日本大震災と、その115年前の明治三陸地震では、ともに魚の大量発生が観測された。

 明治と昭和の三陸地震をルポルタージュした作家の吉村昭は、震災の1か月前の青森県の漁港で〈海面は鰯の体色で変化して一面に泡立ち、波打ち際も魚鱗のひらめきでふちどられた〉と記した(『三陸海岸大津波』)。

 東日本大震災直前の2011年2月にも、マイワシの月間漁獲量の異常が東北6漁港で観測された。

「3.11と漁獲量との関連性は、2005年からのマイワシの漁獲量を見ると、計12か月にわたり異常が報告された。そのうち、漁獲異常が観測されてもM7~8級の地震が発生しなかったケースもあった。この結果から、マイワシの大漁が大地震の前兆だと判断するのは早合点だといえます」(長尾氏)

イルカ、クジラの集団座礁

 2011年3月4日、茨城県鹿嶋市の海岸で、イルカの一種であるカズハゴンドウ54頭の集団座礁が観測された。東日本大震災の1週間前だったため、SNSで「前兆現象だったのでは」と騒ぎになった。

「日本鯨類研究所が公開しているイルカ、クジラなどの海棲哺乳類の座礁情報によると、2005~2010年まで年間200件以上打ち上げが観測されており、カズハゴンドウも含めて、直後に地震が発生しなかった事例のほうがはるかに多い。

 イルカやクジラの集団座礁と地震は一般には関係ないと考えるべきでしょう」(長尾氏)

※週刊ポスト2021年8月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン