3次審査の福田のダンスに魅せられたという(撮影:小倉雄一郎)
入江監督「直感は間違ってなかった」
また、入江監督は完成した映画を観てあらためて福田を起用することができてよかったと語る。
「今回はミニシアターを支援するという意図で立ち上げた企画でもあるんですが、ミニシアターを中心に活動している俳優さんだけで固めなくてよかったなと、いま振り返ると思います。福田さんみたいにメジャーな作品に数多く出られている方がこういう映画に出演すること自体が間口を広げるというか、風通しを良くしてくれる感じがするんですね。
映画にも色々なジャンルや規模があるんですけど、何かに凝り固まってしまうとつまらないんですよ。色々な人が携わっていると面白くなる。福田さんがいきなりDenkikanに行ったという話も、ミニシアターの人にとってはちょっとした事件ですよね。そういうハプニングが起こせるのもこういう企画の面白さですね。
とはいえ間口を広げるために福田さんを選んだわけではなくて、やっぱり芝居が素晴らしいんですよ。ダンスもそうですし、走り方とか歩き方、猫背の具合とか、そういう細かいところもご本人でアイデアを出して演じているんです。そこらへんは細かなニュアンスの問題になるので、演出で指示するのは難しいんですよね。俳優さんが持っているディテールの表現力に頼らざるを得なくて。
なので完成した映画を観て、福田さんに出演していただくことができてよかったなとあらためて思いますし、試写会でお客さんから寄せられた感想を聞くと、オーディションの日に僕が抱いた直感は間違ってなかったなと。嬉しいです」(入江監督)
福田沙紀なくして完成し得なかった『シュシュシュの娘』は、新たな役者人生を歩み始めた彼女にとっても今後を占うような重要作の一つとなったようだ。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)
『シュシュシュの娘』より(2021年8月21日〜渋谷ユーロスペース他にて順次公開) 制作プロダクション・配給:コギトワークス (c) Yu Irie & cogitoworks Ltd.