近年は、怒らない、怒鳴らない指導で甲子園に出場する高校野球の監督も増えてきた。だが、長年、当たり前としてきた乱暴な言動が、いきなり世界から消えることはない。プロ野球日本ハムファイターズが8月11日に発表した「中田選手の違反行為と処分について」。再び表面化した体育会特有と言われる「いじり」「かわいがり」について、俳人で著作家の日野百草氏がレポートする。
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「あの円陣、いじりの思い出が蘇りました。部活で嫌な思いをした人にはわかる空気です」
元高校球児、関田秀隆さん(40代、仮名)に改めて映像を観てもらう。観ていただいているのは北海道日本ハムファイターズ(以下、日ハム)の球団公式ツイッターに投稿された、オリックス・バファローズ戦前の円陣である。4月11日に公開されたこの映像は当時から「空気最悪」「いじりがキツい」といった意見が寄せられた。
「体育会系では伝統みたいなものです」
いじりとはからかったり、つっこんだりといった行為で、コミュニケーションの一環とされてきた。
「仲の良い間でからかったり、つっこんだりはありますけど、部活みたいな上下関係では意味が違ってきます」
断言はできない。ここは意味が違ってくることもある、と言うべきだろうか。部活の上下関係でも仲が良かったり信頼関係が構築されたりしていれば、それはまさしくコミュニケーションの一環だろう。だが筆者のこの意見に、関田さんは首を振る。
「いや、サークル感覚の部活ならともかく、プロを目指すような部活の上下関係はそんなものじゃありません。上級生によっては独裁国家みたいになります。そんな状態になった部に入る新入生は地獄です」
部活の恐怖政治といえば監督や顧問がまっさきに上がるが、実際の部活によっては上級生、先輩による恐怖支配が蔓延っていることもある、ということだろう。筆者もこうした部活で上級生によるいじりの被害を受けたことがあるが、この問題が時代や学校、個々人の関係にもよるのでバッサリ「悪」と言い切れないところが難しい。これがわかりやすい体罰やシゴキに比べていじり行為(悪質な、とつけるべきか)の対処をより難しくしている。