試合前にベンチ前で円陣を組む日本ハムの選手たち(イメージ、時事通信フォト)
いじる人というのは平気で暴力もふるう
「この、うるせえよ、が怖いです。ちゃんとやっても必ず言われるんですよね、儀式みたいなもんで、恫喝ですね」
関田さんは映像の中で日ハムの主砲、中田翔選手(32歳・内野手)が低く発した「うるせえよ」を指摘する。
「万波選手はしっかり声出ししています。それなのにこの中田さんの一言でやり直し、他の選手も笑うか無視ですよね。これ、雰囲気の悪い部活でもよくあることなんですが、1年生は萎縮するし、みんなのやる気もなくします」
円陣の声出しは日ハムの若手、万波中正選手(21歳・外野手)。事の経緯はあるようだが「うるせえよ」はないだろう。そしてそのあとに信じられない言葉が円陣に参加した何者かから発せられる。「日サロ行きすぎだろお前」と。
「いじりがひどくなるとこうなるんです。見た目とか、生まれとかをいじりだす。もういじりじゃないですよね、でも悪質な部活動ではずっと行われてきたことです」
エスカレートしたいじりはいじめや差別となる。容姿や出自、努力ではどうにもならない本質を悪し様に「いじる」。万波選手の父親はコンゴ出身、彼の肌の色を揶揄したことは明白だ。いじる側にしてみれば、絶対に克服されないであろう本質はいじるにうってつけだ。人種は変えようがない。
「そういうことを平気でやる人がいると空気は最悪です。やめろよと言う部員もいますが、いじる人というのは平気で暴力もふるいます。だから口答えはしません。私の時代の部活では先輩の殴る蹴るはあたりまえでしたし、それを自慢することがかっこいいという時代でした。いまも裏では変わらないと思ってます」
円陣の映像を改めて聞くと「まずいですよ」という声も聞こえるが小さくせせら笑う声が大半だ。中高生の部活どころか日本のトッププロリーグの選手たちがこれ、事の善悪くらいはついているはずで、面と向かってそれを主張できない空気に侵されているのが現在の日ハムなのだろう。笑いはノリを壊したくないという、いかにもな同調圧力だ。
「そのいじりに暴力が加わるとどうにもなりません、私も散々やられました」