当時から119キロの球を繰り出していた(2018年撮影、写真/藤岡雅樹)

当時から119キロの球を繰り出していた(2018年撮影、写真/藤岡雅樹)

 今年6月、およそ3年ぶりに島野さんと会った。神戸弘陵への入学後から、大手芸能事務所に所属しているということにはビックリしたが、それ以上に投球フォームが大きく変わっていたことに驚いた。重心が高くなり、タメを作って打者に向かっていく。
 
「中学の時は、女子野球が嫌で、自分の力がどこまで通用するのかを試したくて、男子の中に入りました。でも、高校は女子野球になる。自分の置かれた場所で、活躍することだけを考えてやってきました。女子野球は想像していた以上にレベルが高い。中学ではスピードは武器じゃなかったけど、女子野球なら私のスピードは武器になる。それを意識した結果、今のフォームにたどり着きました。常時120キロ台後半が出るようなピッチャーになりたい」

 中学硬式野球で日本一のエースなら、高校進学後の女子野球では独壇場となるのではないか。外野はそう思いがちだが、現実は違った。昨年はコロナ禍によって軒並み大会が中止になったとはいえ、高校入学後、彼女は一度も日本一には届かず、この春の全国大会でも準決勝で履正社に敗れた。

「この2年半は、立ち止まった時もあったと思うんですけど、チームスポーツには結果が伴わないこともある。後ろに下がっているわけではないので、前向きに考えています」

 ふたりの兄もプレーした甲子園球場のマウンドに立つことは、女性である彼女にとって、かなわぬ夢だった。ところが、今年から選手権大会の休養日に全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝が開催されることが決まった。中学時代から注目を集めた彼女のためかと思いたくなるような最高の舞台が用意された。

「そう思ったら足下をすくわれちゃう。最後の夏に懸けてきました。仲間と共に、日本一になりたい」

 高校卒業後は、女子プロ野球や大学の女子野球など、様々な進路が考えられる中で、彼女はまだ答えを出していない。神戸弘陵の石原康司監督に話を聞くと、「彼女は男子の大学野球の中で力を試したい気持ちもどこかにあるんじゃないかと思います」と話していた。
 
 島野さんは言う。

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