クーラーから出るのは「乾燥した風」
「乾燥するのは冬」というイメージが一般的だが、なぜ、真夏にクーラーをつけると乾燥を感じるのだろうか。
建物の空調制御に詳しい広島工業大学環境学部准教授の宋城基さんが解説する。
「クーラーは機械の内部に暖かい空気を取り込み、急激に冷やした空気を出すことで室温を下げます。このとき、空気中に含まれていた水分は、クーラーの内部で急激に冷えたことで『結露』します。結露した水分は、室外にあるパイプから排水されます。
つまり、クーラーから出る涼しい空気は、水分が少ない乾燥した風なのです。この現象は『ドライ運転』に限らず、冷房でも同じ。気温が高くてジメジメする日は、ドライではなく冷房をつけた方が室温も湿度も同時に下げられて効率的です」
クーラーの室外機の近くにあるパイプから、水がポタポタと流れ出る様子を見たことがあるだろう。あれは、室内の空気に含まれていた水分が取り除かれたことを示しているのだ。
「皮膚は、乾燥から肌を守るため、安静時でもわずかな発汗を行う『不感蒸泄』と呼ばれる生理現象を繰り返しています。クーラーの効いた部屋に長時間いると皮膚の乾燥や疲労を感じるのは、室内の空気が乾燥することで汗の蒸発が速くなってしまうことが原因の1つだと考えられます」(宋さん)
肌に乾燥を感じるということは、喉や鼻などの粘膜も乾燥している可能性が高い。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広さんが話す。
「熱中症予防の視点から、クーラーは積極的に使うべきだと思います。ただし、直風でクーラーに当たり続けていると、人の体の周囲にある水蒸気がどんどん蒸発してしまうため、急速に乾燥してしまう。
鼻や口、消化管などの粘膜には、食べ物や酸素など体を維持するために必要なものを通過させ、ばい菌やウイルスの通過を妨げる働きがありますが、粘膜が乾燥すると、ばい菌やウイルスも侵入しやすくなってしまいます。そのため、乾燥した粘膜は炎症を起こしやすく、くしゃみや咳、鼻炎などの原因になります」
クーラーの風が直接当たる場所に布団がある場合、眠っている間中、乾燥し続けていることになる。「朝起きると喉が痛い」という人は、今日からクーラーと布団の位置を見直してほしい。