芥川賞作家の高橋三千綱さんが肝硬変と食道がんのため、8月17日に東京都八王子市の自宅で亡くなった。73歳だった。代表作に『九月の空』『退屈しのぎ』などがある高橋さんは、大相撲に造詣の深い好角家としても知られていた。本誌・週刊ポストの取材には、相撲界に対して独自の視点から考察したコメントを寄せていた。
先の7月場所で全勝優勝して復活を果たすも、立ち合いのカチ上げや張り手が長く批判されてきた横綱・白鵬については、本人だけの問題ではないと指摘していた。
「日本の相撲や横綱の文化を理解して入門したのではなく、メシを食べるためにやってきたわけでしょう。師匠や後援者が(大相撲の精神を)教えないといけなかったが、それができる人が周囲にいなかったことに尽きます。“チャンピオン”が目標で上がってきた力士だから、勝つためにはどんな手段でも使う。今になって横綱に相応しくないとか、一代年寄の資格がないというのはおかしい。最初からわかっていたことです」
愛着があるからこそ、厳しい物言いもあった。「どんな改革を実行すれば大相撲はよくなるか」というテーマでの取材に際しては、「理事クラスに知識がなく、自分たちで何も考えられない人たちの“共済組合”のような組織なので、他者の指摘を拒絶してしまう。だから何をいっても無駄です」としながらも、独自の改革案を話してくれた。
「あえて数字的なことを言えば、『年4場所』『横綱は東西2人』『大関は2人プラス張出し2人まで』でしょう。そして、幕内力士の総数はむしろ減らして、『平幕は東西8人ずつの16人』とするのが理想ではないか」
その理由について、高橋さんはこう続けた。
「多くのスポーツでベスト16というのはひとつの区切りであり、選手はベスト16を目指す。相撲の場合、横綱のほか、大関、関脇、小結の三役という独特の“シード選手”がいます。この三役は別枠にして、前頭を東西8枚目までの16人に絞るという考え方です。横綱、三役を加えた24~26人で総当たりし、本場所の途中からは勝ち星を重ねた16人による8取組で優勝争いをする。黒星が先行してここから脱落した力士は下部(十両)との入れ替え戦に回るわけです。三役の力士も入れ替え戦に回る方式にすれば緊張感が生まれ、優勝を狙える力士が明確になる。幕内で取る相撲はすべて優勝に絡んでいるということになれば、無気力相撲は一掃される。よりガチンコ相撲が増えて優勝争いも混沌として面白くなる」
幕内上位の力士たちに、地位に見合った自覚が見て取れず、緊張感を欠いた土俵が多いことを心配するからこその提言だったのだろう。負けても大勢に影響がないという一番がなくなるのであれば、年6場所を春夏秋冬の年4場所(東京での2場所の他に大阪と福岡で開催)にするべきだと語っていた。
「張出横綱はつくらない。空席ができたら上げる。横綱は“頂”なので、3人も4人もいても意味がない。最強の力士がひとりでもいいと思っている。無理に上げる必要はありません」
また、「NHK依存からの脱却」にも言及していた。1場所5億円といわれる放映権料に依存することの弊害も見通していた。