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断薬の名医、降圧剤を減らす方法 「最初は薬の量を増やす」の真意

坂東ハートクリニック院長の坂東正章医師

坂東ハートクリニック院長の坂東正章医師

 東京都健康長寿医療センター研究所などの研究グループが、2020年2月に発表した高齢者の多剤処方に関する論文によると、都内の後期高齢者の患者は、平均で6.4種類の薬を処方され、なかでももっとも多いのが「降圧剤」で、66.5%の人が処方されているという。

 歳を経るごとに血圧は上がるため、「降圧剤は服用を始めたら一生のつき合い」といわれる。しかし、徳島県の坂東ハートクリニックには全国から“降圧剤をやめたい”という患者が訪れ、院長の坂東正章医師によると「4年ほど前から原則、新規患者を受け入れられない」ほどだという。

 ラジオディレクターのAさん(男性、60歳、169cm、67kg)は、2014年、たまたま実家にあった血圧計で測ったところ、上160、下110と出て、高血圧に気づいた。

「それまで健康診断で引っかかったことがなかったので、驚きました。仕事柄、生活は不規則で、朝4、5時に起床することも多いのですが、朝と夜に測ると基準を大きく上回っている。心配になって近所の病院を受診したら、ノルバスク5mgを処方されました。最初の1か月は徐々に下がったんですが、その後、血圧が上下するようになり、医師からは『じゃあ、薬の量をもう少し増やしましょう』と言われました」

 通院していた約3年間、Aさんの降圧剤は少しずつ増えていった。薬を渡されるだけの診察に疑問を感じ、2017年に坂東医師のクリニックを受診した。

「以前、坂東先生のクリニックを知る機会があって。診察だけでなく管理栄養士や看護師が食事や家庭血圧の聞き取りをするという、他では聞かない治療方法が印象に残っていたんです」

 坂東医師の指導は、正しい家庭血圧測定の指導から始まる。

「椅子に座り、腕帯は心臓の高さに着け、血圧計に正面を向いた無理のない姿勢で計測すると教えられました。測定する時間も起床1時間以内で、散歩など身体に負荷をかける前にすると。これまで意識したことがなかったので驚きました」

 その後、管理栄養士や看護師を交えて食事や生活習慣を改善していく。

「私は食べ物に醤油やソースをほとんどかけないので、塩分を取り過ぎている自覚はまったくなかったんです。だけど、管理栄養士に報告したら、1日10g以上も塩分を摂取していた(坂東医師は1日の塩分摂取を6g以下に設定)。外食でお酒を飲むと食事量が増えて、思わぬ量の塩分を摂取していたんですね。

 朝食も減塩になるし、健康にいいと思ってシリアルと豆乳にしていたんですが、『シリアルはお菓子なので、ご飯、納豆、具沢山の味汁で栄養を取ってください』と言われ、〝味汁はいいの?〟とびっくりした。このメニューなら塩分は2g程度で、夕食で塩分を調整すればいいと。

 もう一つ指導されたのは、『寝る前のお酒は控えること』。晩酌でビールとつまみを食べて寝る生活習慣でしたが、夜中にトイレで目が覚める。すると、もう一度寝ても血圧が高い状態で維持されてしまうそうです」

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