かつてカメラ導入に「刑事が機械に頼るのか」と反対される場面に遭遇した秋山氏

かつてカメラ導入に「刑事が機械に頼るのか」と反対される場面に遭遇したこともある秋山氏

 凶悪犯罪が多発した昭和末期から平成初期。捜査漬けの日々を送る中、失敗も多々あったという。長い刑事人生の主戦場は、殺人、強盗、放火など凶悪犯罪を扱う捜査一課。キャリアを積み上げる中で、地元の暴走族やヤクザも一目置く存在になっていった。確保に当たった犯人に刃物で斬りつけられるなど、危険な目に遭ったことも一度や二度ではない。殉職を覚悟した壮絶な現場もあった。

「人質立て籠もり事件で部下2名と現場に踏み込むと、犯人がガソリンに火をつけた。火だるまになった犯人は即死。私たちも猛火と黒煙に包まれ逃げ場を失ってしまいました。幸い、台所の小窓から脱出できたのですが、さすがにこの時は死を覚悟しました」

 2000年には警視庁捜査第一課特殊犯係に出向。英国人女性、ルーシー・ブラックマンさん殺害事件、世田谷一家殺害事件などに携わる一方、日比谷線脱線事故や日航機ニアミス事故など大規模事故の捜査を担当した。

「赤いシャツに黒スーツ姿で登庁し、管理官に『着替えてこい!』と大目玉を食らったこともあります。でも、私は見た目で判断されないよう人の10倍、20倍仕事をしてきた自負がありました」

 トレードマークのリーゼントは、「高校時代から憧れの存在」というロックミュージシャンの矢沢永吉に由来。警察学校時代を除き、今もそのスタイルを貫き通す。

 警察官人生最後の部署は、徳島県警本部のサイバー犯罪対策室。親子ほど年の離れたエンジニア出身の部下らと、ITを悪用した特殊犯罪の捜査などに当たった。

「現在は、粗暴犯よりITを使った知能犯が増えつつある。若い刑事はスマホやパソコンを駆使した捜査に長けているが、被疑者確保の現場に警棒を持たず革靴で臨場してしまうようなことがある。被害者も被疑者も目撃者もすべて人間。若い世代にはそうした刑事の心を伝えていきたいですね」

 週刊ポスト(9月6日発売号)では、リーゼント刑事・秋山博康氏が42年間の警察人生を語り尽くす。

【プロフィール】
秋山博康(あきやま・ひろやす)/1960年7月、徳島県生まれ。1979年、徳島県警察採用。交番勤務、機動隊を経て刑事畑を歩む。県警本部長賞、警視総監賞ほか受賞多数。退職後は犯罪コメンテーターとして活動。YouTube「リーゼント刑事・秋山博康チャンネル」が好評。

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン