学校に掲示された、新型コロナウイルス感染予防の注意事項(イメージ、時事通信フォト)
夏休み明けの「学校再開」をめぐっては、子を思う親たちの危機感もより高く、それに伴い追い込まれた教師は少なくない。
「クラスの親御さんだけのグループラインあるのですが、学校再開を前に、どこどこの学校ではクラスターが出た、とか噂話が飛び交い、学校を休校させよ、と議論になっていたようなんです。すると先生はどうなのか? ということになったらしく、そのグループラインに招待されてしまい、そこで意見表明を求められてしまい……。SNSで親御さんと繋がるのは学校も認めていませんし、判断できないとしか言えませんでしたが、先生は無責任だと言われ、収拾がつかなくなってんです」(藤井さん)
埼玉県内の中学校教諭・豊島博之さん(仮名・30代)も、夏休み明けの子供達の登校については懐疑的だった。もし感染者が出れば、もし発症して重症化する教え子が出たら、そう考えると、親たちが求める「休校」は妥当にも思えた。だが、休校したところで、子供達が自宅学習できるようPCやタブレットの配布は済んでいたものの、ネット環境が整っていない家庭などもあり、万全の体制が組まれているとは言い難い。現実的には、時短授業や時差登校を行ってできるだけ生徒同士の接触機会を減らし、継続した学習機会を子供たちに与え続けることが最適解のように思えた。
しかし、親たちはグループラインの中で「登校派」と「休校派」に別れて、お互いを罵倒し始めるのである。藤井さん同様、ある親からライングループに無理やり招待された豊島さんは「どちら側に着くのか」と、タイムライン上で吊し上げられた。
「とにかく手洗いうがい、日々の衛生対策をしっかりやってとしか言えませんでしたが、これが悪かったようで、どちらの親からも強く責められることになってしまいました。学校に行くのが本当に辛かったし、子供たちにも合わせる顔がありませんでした」(豊島さん)
豊島さんの学校では、子供達の登校だけでなく、子供たちへのワクチン接種についても、親たちの間で議論されていた。そして、ここでもやはり「どちら側に着くのか」と親たちから追及されるという。
「ワクチンで子供が死んだ、政府は隠蔽しているという資料とか著名人の書き込みをシェアし、ワクチンを打つべきではないという親御さんもいます。その親御さんが社会的に地位がある人だったりして、他は何も言えなくなったりもする。子供達の中にはすでに自治体の接種を受けている子もいるのですが、そういった子達がかわいそうとも言い始め、大人同士の軋轢が子供に広がってしまわないか、危惧しています」(豊島さん)
筆者も子を持つ親だ。子供の感染や夏休み明けの登校再開など、心配な点は大いにある。だが、だからと言って「一存ではどうにもできない」立場の人たちを追及することは、余計な混乱が生じるだけだ。教師たちも大半の人がそうであるように、日々の感染対策を続けていくこと以外に、子供達の学習環境を担保する方法はないと感じている。教師たちが葛藤する日々は当分続きそうだが、子を持つ親だからこそ、子供達のための建設的な議論をするように心がけたい。子供は教師や親の一挙手一投足を、見つめ続けているのだ。