歯科医院へ連絡してきた同じ業者が「悪いクチコミ消しませんか」と営業電話をかけてきた(イメージ)
「誰かの悪戯かもしれない、などと言っていましたが、オタクがやったんでしょう? と言いたい気持ちをぐっと抑えて、話を聞きました。でもやはり合点がいかない。クチコミを管理している事業者に問い合わせのメールを入れましたが返答もない。金を払うと業者の思う壺だし、様子見することに決めました」(本田さん)
その後、新たにネガティブな評価をつけられることは無くなったというが、知人の飲食店経営者もまた、同じような経験をしていたことを知る。
「うちにかけてきたのと同じコンサル会社から、やはり悪いクチコミを消しませんかと営業を受けていたそうなんです。営業電話の後に悪いクチコミが増えるのも同じ。やっぱりと思いましたよ」(本田さん)
取材を進めると、本田さんや知り合いの飲食店経営者以外にも、このコンサル会社から連絡を受けた、という人物に辿り着くことができた。東京都渋谷区内の美容室経営・島崎曜子さん(仮名・30代)だ。
「美容室にとって、クチコミはもはや生命線とも言っていい。以前なら、利用したいというお客様が店の見学に来られることもありましたが、コロナ禍になってからは、新規のお客様のほとんどが、クチコミを便りにご来店されました」(島崎さん)
こういうだけあって、普段から各サイト、SNSなどにあげられる店に関するクチコミを細かくチェックしていたという島崎さん。クレームや悪いクチコミが投稿されたら、その日のうちにスタッフと共有。悪い評価をつけられるだけのトラブルが実際にあったのかどうかを報告させ、サービス向上や顧客管理に役立てていたのだ。だからこそ「嘘」にもいち早く気がついた。
「業者から電話がかかってきた後に、悪いクチコミが一気に増えました。スタッフに聞いても、トラブルの覚えはなく、常連さんばかりがきていた週で、そういう投稿がされてしまうような覚えはないと」(島崎さん)
島崎さんはすぐ、都内で美容室を経営している数人の友人に電話。すると、時期は違えど、どの店にもやはり似たような内容の営業電話がかかってきていたという。島崎さんの知人で、東京都港区内の美容室で店長を務める中西敏史さん(仮名・40代)が証言する。
「島崎さんの電話で、ああやっぱりと思いました。近くにライバル店があり、格安で施術することから人気があったのですが、安い薬剤を使っていたり、スタッフの技術が未熟でクチコミ評価も悪かったんです。ところがある時期、その店の悪い評価がほとんど消え、良い評価が連続して投稿されていました。そんな時にかかってきたのが例の営業電話です」(中西さん)