中西さんは、良い評価や悪い評価のクチコミ投稿がコンサル業者の「自作自演」だと確信。ライバル店の店長を問いただしたところ、業者から電話があり、悪いクチコミの削除を依頼した件は白状したため、業者に直接赴き、担当者を呼び出したというが……。
「最後は警察を呼ぶぞ、で追い返されました。ライバルの悪いクチコミ削除と、私の店を含む近隣ライバル店につけられた悪いクチコミ投稿はセットだったのでしょうが、追及すると何も話しませんでしたね。クチコミというのは、顧客の生の声です。そもそも、クチコミって『この店いいな』と思う時より『この店ひどいな』と思う人が書き込む場合が多い。だから、ネガティブなクチコミでも、参考になる部分はあったんです。それらが全部嘘、となると、顧客も何を信じていいかわからないし、我々だって大変なダメージですよ」(中西さん)
その後筆者が調べたところ、本田さんや島崎さんの元に電話をかけてきた会社と、中西さんの店に電話をかけてきた事業者は同一ではなかった。しかし、どちらも「クチコミ」対策をメイン業務とする会社で、これらの会社の「クチコミ」もまた、ひどいものだった。結局、クチコミを悪用しようとしたが故に、クチコミによって、ユーザーから追求を受けているのか。
この二社に電話取材を試みるも、返ってきたのは「取材は受けない」という簡素なメールのみ。電話口では「変な取材をされるのなら訴える」と、恫喝めいた忠告を受けたことも記述しておく。
中西さんによれば、最近はあからさまな嫌がらせだとわかるクチコミは減り、誉め殺しに近い、一見すると「ネガティブなクチコミには見えない投稿」が増えつつあり、こうした業者が関与しているのではないかと疑っている。
「例えば、うちの店はべらぼうに高いが技術は確か、金さえ払えば手厚い接客だが貧乏人には冷たい、などといった投稿です。意図的に店の敷居を高く見せ、客が避けるように仕向けている。悪いクチコミが増えた後に、新規客が減ったのも確か。明らかな営業妨害なのに、野放しにされている」(中西さん)
各ECサイトでは、何年も前からサクラによる「やらせ」レビューがはびこっている。運営側が規約違反だとアカウントを停止しても、やらせレビューを次から次へと組織的に投稿させる事業者がいることもあって、いたちごっことなっている。
最近でも、大手通販サイトから中国系業者が締め出された、と騒動になっているが、これらの事業者は様々な方法でレビュー操作、いわば「クチコミのやらせ」をしていたと、ネット上では兼ねてから噂されていた。レビューを信用して購入したが、不良品だったという被害も後を絶たず、利用者は自衛のために、このレビューはサクラによる「やらせ」かどうか見破るスキルを身につけねばならない。それと同じことが、店や場所についてのクチコミ界隈にも起きている。しかも、悪評をクチコミ対策事業者がわざと投稿して回復させたかのようにみせるマッチポンプ疑惑まである。
コロナ禍で大ダメージを受けている「接客」を伴う事業者たち。そんな中、混乱する業界に土足で入り込み、火事場泥棒のようなマネで儲けようという自称コンサル事業者たち。道義的にどうなのだと訴えても、おそらく彼らは止めないだろう。虚偽のクチコミ投稿を軸としたビジネスが成り立たないような仕組みが求められている。