その一方で、マップ上で浸水の可能性ありとして色がついている地域以外にも、被害が及ぶこともあるので、その点も注意してマップを確認してください」(岡本さん)
確認すべきは自宅とその周辺、子供の学校など家族の行動範囲圏内と、避難先がどこになっているかということ。特に現在は新型コロナの影響で収容人員を絞るため、避難先が変わった可能性もあり、自治体のホームページなどもしっかりと確認しておくべきだ。防災システム研究所所長の山村武彦さんはいう。
「ソーシャルディスタンス確保のため避難所に入れないこともあるので、安全な地域に住む知人などに『いざというときに避難させてほしい』と声をかけておくことが大事で、ホテルや旅館などの宿泊施設への分散避難も有効です。大都市のなかには車中避難を認めない自治体がありますが、郊外にいて冠水していない時間帯に安全な経路で避難するのであれば、車中避難も選択肢の1つになります」(山村さん)
ゲリラ豪雨で避難先が絞られる状況は在宅避難が重要な選択肢になる。事前に防災グッズを備蓄しておきたい。
「非常用の水と食料、現金に加えて、コロナ対策のため使い捨てマスクや体温計、アルコール消毒液を非常持出袋に入れておきましょう。これらは避難所生活になった際も役に立ちます。非常持出袋は玄関先など、避難する際に素早く手に取れる場所に保管しておきましょう。特にゲリラ豪雨の際は1階が浸水したら2階、3階への迅速な垂直避難が必要で、下の階に生活に必要な物品を取りに行く余裕はありません」(岡本さん)
地方の親がハイリスクの地域に住み、実際に災害が起こりそうな場合は、積極的に避難を促すように心がけたい。
「心理学上の『多数派同調バイアス』が生じて、本当は危険な状況にいるのに、周囲が避難しないから自分も安全だと思い込む傾向があります。そこで大切なのは、『本当に避難が必要なんだ』と思わせる動機づけをたくさんすることです。子供が安全な場所のビジネスホテルをネットで予約して避難を呼びかけたり、仲のいいご近所や知人に避難を呼びかけてもらうなど、複数の手段で注意喚起をしてほしい」(岡本さん)
山村さんも迅速な避難が重要だと指摘する。
「最近は、避難指示を待っている間に逃げ遅れる事例が後を絶ちません。警戒区域に住んでいて土砂災害警戒情報が発表されたら、気象庁の危険度分布図『キキクル』にアクセスして、住んでいる地域が薄紫、もしくは濃い紫になっていたら、避難指示が出なくても早期に自主避難することが大事です。特に裏山や崖がある場合は、速やかに立ち退き避難をしてほしい」
昔なら当たり前とされたことが通用しなくなったいまの世の中では、常に災害発生を前提とした準備と心構えをしておく必要があるのだ。雨上がりの空を、安全な場所から健康な状態で見上げるために、いまできることがある──。
※女性セブン2021年9月23日号