スポーツ

巨人・保科広一の暴言騒動から見えた「育成選手たち」の厳しい現状

暴言が問題になった保科広一選手(巨人の公式HPより)

暴言が問題になった保科広一選手(巨人の公式HPより)

 2020年育成ドラフト11位で巨人に入団した外野手の保科広一(23)が、少年に「野球なんかしてもつまんねえぞ」と暴言を吐いたことが波紋を広げている。
 
 本誌・週刊ポストが、7月13日、東京五輪によるリーグ戦中断前最後のヤクルトとの二軍戦(戸田)の試合後、キャッチボールをしていた親子を見かけた保科がいきなり少年に向かって、「野球なんかしてもつまんねえぞ」という言葉を投げかけたことを報じた。少年の親は球団に抗議し、球団は謝罪に追い込まれる事態となった。
 
 保科は高い身体能力で知られ、ルーキーながら二軍に帯同し、一時は打率が3割を超えるなど“育成の星”として一軍候補と期待されている選手だった。そんな彼がなぜこのような発言をしてしまったのか。それには巨人の育成選手たちが置かれている厳しい現状があるようだ。

 8月31日の支配下選手登録の公示期限を前に、各球団では支配下選手への昇格が相次いだ。上限の70人枠を埋めるためだ。巨人も2017年のドラフト1位で、右ヒジの肘頭骨折で手術を受けたことで育成契約だった鍬原拓也(25)、二塁までの送球タイムが1秒7の強肩捕手/喜多隆介(23)が昇格した。

 巨人では2016年育成ドラフト5位の松原聖弥(26)が堅実な攻守でレギュラーの座を奪うなど育成選手にスポットが当たっているが、現実はかなり厳しい世界だ。

「8月20日時点で育成からの昇格枠は3枠空いていたが、中田翔(32)を無償トレードで獲得したことで2枠に減ってしまった。巨人は外国人選手やFA、トレードでの戦力補強をするため、他球団と比べて二軍選手や育成選手のモチベーションは低いですね」(巨人担当記者)

 三軍制を敷いているのは巨人、ソフトバンク、広島、西武、オリックスだが、最も多くの育成選手を抱えているのは巨人だ。2月のキャンプ時で26人の育成選手がいた。元巨人の投手コーチで、二軍の取材を多くしている関本四十四氏によれば、育成選手が多いため三軍での競争が激化するという。

「育成選手はまず二軍のゲームに顔を出せるようになりたい。そのために投げる、走る、打つなどの一芸を猛烈にアピールし、二軍の試合でレギュラーとなって支配下選手を目指す。育成選手は二軍を飛び越えて一軍のゲームに出場することができないため、まずは支配下選手にならないといけない。

 ところが、選手が多いということはいい素材の選手も多い。そのため二軍の試合に出場するのも高い競争率となる。巨人はイースタンで最下位なのでどうなっているのかと思うが、上から落ちてくる選手の対応もありますからね。中田翔の加入で北村拓己(26)が落とされたことでもわかるように、もともと育成にいる選手が脚光を浴びづらいのが現実です。

 巨人ではかつて球界を代表するセットアッパーの山口鉄也(37)、松本哲也(37)、隠善智也(37)など育成出身から活躍した選手もいる。今年も直江大輔(21)、平間隼人(24)、戸田懐生(21)らが育成から支配下登録されたが、大型補強をする巨人では育成からの昇格は簡単ではない」(関本氏)

 残り試合が少なくなると、育成選手たちはオフの契約更改が頭をよぎるという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン