もっとも新作では、用件はドアの前で聞くようにと山岸に注意されていたのに、ずんずん居室に入っていく新田がいたりする。事件解決を使命とする刑事がホテルマンとしてのルールと様式をどこまで維持しつつ、突発事項に向き合うのか。しかも時間制限付き。制約は多いほうがドラマチックになるに決まっている。
もうひとつ、ホテル作品の強みは、映画や演劇に「グランドホテル形式」という言葉がある通り、「人間ドラマは向こうからやってくる」。カモネギ状態であるということ。石ノ森章太郎原作のドラマ『HOTEL』(高嶋政伸主演)では、生の鰹をぶら下げた客やホテル評論家がやってきたし、浅田次郎原作の映画『プリズンホテル』(ココリコ田中直樹主演)にも大物演歌歌手や悪役プロレスラーが事情を抱えて宿泊。騒動が巻き起こった。
殺人犯にやってこられてはホテルも大迷惑だが、ロビーなど誰もが出入りできる場所と個人が閉じこもることができる居室が、ひとつの建物にある構造は、ミステリーを面白くする。日常どっぷりライフが続く今、デラックスな仮装パーティーの非日常感はいい刺激になるかも。でもって、誰が犯人なのか? 知ってても、もちろんここには書けません!(お辞儀90度)