スポーツ

貴乃花の横綱論 「横綱になる時」とは「死ぬ時」だと思っています

横綱に求められる条件を語る貴乃花光司氏(撮影/藤岡雅樹)

横綱に求められる条件を語る貴乃花光司氏(撮影/藤岡雅樹)

 大相撲9月場所では、“奇跡の復活”を遂げた照ノ富士が、4年半ぶりとなる新横綱として土俵に上がった。「令和初の新横綱」を「平成の大横綱」はどう見るのか。2018年10月に相撲協会を退職した貴乃花光司氏が語る、角界の最高位に求められる条件とは──。

 * * *
 新横綱の照ノ富士には“日本人的な骨組み”を感じますね。元々、間垣さん(元横綱・二代目若乃花)の弟子だったのでよく知っていますが、気骨がある。そうでなければ、大関経験者が序二段まで落ちてから復活なんてできません。私も右ヒザの怪我で苦しみましたが、照ノ富士は両ヒザの内側、外側、そして前十字……本来、力士にとっては致命傷です。回復力もさることながら、精神力は驚異的ですよね。

 ただ、下から上がっていく時は、猪突猛進、獅子奮迅の相撲でいいんですが、横綱になると負けられない。照ノ富士が大変なのはこれからです。

〈そう語るのは、第65代横綱・貴乃花だ。1990年代の相撲ブームを牽引した「平成の大横綱」である。15歳で父である元大関・貴ノ花の藤島部屋に入門。史上最年少記録を次々と塗り替え、幕内最高優勝22回、横綱としての勝率は8割を超える。横綱に昇進したのは、2場所連続全勝優勝を果たした1994年11月場所後のことだ。その地位を守る覚悟は、相当なものだったという〉

 横綱となるには「大関で2場所連続優勝か、それに準ずる成績」という内規を満たさないといけない。高いハードルですが、横綱になってからのほうが断然大変です。

 私は、「横綱になる時」というのは「死ぬ時」だと思っています。

 入門直後には、相撲教習所で「桜の花が散るように」という横綱像を教えられる。負け越したら終わりとかではなく、もっと深い意味があって、日本国を背負っているぐらいの気持ちで土俵に上がらないといけない地位なのだと教えられました。

 横綱は勝って当たり前。負けてはいけない地位であるうえに、「勝ち方」や「負け方」が問われる。

 横綱としての相撲を取るにはとにかく、「押す力」が基礎になります。私の場合、寄り切りが理想型でしたが、押す力、ぶつかり稽古の基礎、締め付ける力、そして足の運びが合わさって寄り切りになる。北の湖理事長(故人)の突き押しには勝負を決める威力がありましたが、横綱になって寄り切りや突き押しで勝負を決めるのが一番難しいと思います。相手は自分の得意な取り口できて、横綱はそれを受け止めたうえで勝たないといけない。また、負けた翌日のきっちりとした勝ち方というのも求められる。そんなことの繰り返しですから、横綱という地位にあることは、精神的な負担が相当大きいのです。

関連記事

トピックス

清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
引退すると言っていたのに誰も真面目にとりあっていなかった(写真提供/イメージマート)
数十年続けたヤクザが引退宣言 知人は「おめでとうございます」家族からは「大丈夫なのか」「それでどうやって生きていくんだ」
NEWSポストセブン
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト