ワクチン2回接種を受けていない人は在宅勤務に(イメージ、TT News Agency/時事通信フォト)
具体的には、ワクチンの有効性が書き込まれた資料を読まされ、ワクチンのビデオを見せられ、最後は感想文を書いて上長に提出する、というものらしい。ここでほとんどの未接種社員は、圧に負けてその場で接種日を予約する。しかし、基礎疾患やアレルギーなどの既往歴があるわけではないが、まだ「様子見したい」「出来れば打ちたくない」という社員が数人いた。
「それでも打たない社員は、9月の半ばから自宅勤務シフト、いわゆる『リモートワーク』になりました。ほとんどの社員がワクチン接種済みで出社しているため、正直、のけ者にしているようなものです」(桜井さん)
ワクチン未接種者への冷遇は、桜井さんの会社だけで起こっている事態ではない。都内のIT関連会社勤務・宮田雄人さん(仮名・20代)も、当初はワクチンに対して懐疑的だったが、海外のニュースなどでワクチンの有効性を確認し、自分も早く打ちたいと思うようになった。しかし、ある時期までは、社内の人間がまさかこっそり「接種」しているなどとは想像もしていなかったと憤る。
「最初は怖かったし様子見していたことは事実。でも、打ちたいなと思っても、接種券は来ないし、職域接種もない。8月の終わりに出社したとき、上司が『おまえまだ打ってないのか』と驚いていましたが、職域接種が行われていたことを、その時はじめて知ったのです」(宮田さん)
宮田さんをはじめ、ワクチン未接種の若手社員のほとんどには知らされていなかったが、上層部や一部の役付社員は、若手に先行し、そして内緒で、親会社の枠の「職域接種」をかなり早い段階で済ませていたという。そして、その事実を知らない上司が、うっかりその本当のことを宮田さんに告げてしまったのだ。
「ショックだったのはそれだけではないです。若手の他に、ベテランの派遣社員やアルバイトなどにもそうした事実は知らされていませんでした。結局、自分たちが打ち終わったから、おまえらも早いところ注射しろ、と言われたも同然だと皆が受け取りました」(宮田さん)
上司は、9月後半からの出社について、原則「ワクチン接種者のみ」という決定を下し、所属部員にメールをしている。ところが、これは「社としての決定」ではなく、上司の個人的な「意向」として伝えられている。会社が社員や関係スタッフに一斉に知らせればよいはずなのだが、そんな「強制」は出来ないということなのか、その責任を上司に押しつけて、もし問題が起きたら上司個人のパワハラに矮小化するための細工をしているようにも感じている。