俳優たちの息の合った掛け合いが大きな魅力の本作だが、その中でも特に“クールな二枚目”と“愛嬌ある三枚目”を自在に操って見せた中島の演技はさすがの一言だった。彼の新たなハマり役が生まれた印象だ。

 中島といえば、そもそも“二枚目と三枚目”という役どころに長けた俳優だ。過去作を振り返ってみれば明らかだろう。2018年に公開された映画『ニセコイ』では、親の言いつけによって好きでもない女子と“偽物の恋”をしなければならない高校生を演じた。乱暴な彼女に翻弄されるシーンはオーバーでコミカルな演技に徹するも、そんな彼女に対して揺れる心情は細やかな演技で表現していたのが印象に残っている。一年前に放送されたドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)においては、冷静で頭脳明晰ながらも、どこか間の抜けた警察学生に扮していたことが記憶に新しい。いずれの作品でも中島は、クールな一面と滑稽な一面という対照的な役を大胆に披露した。もはや彼は、独自の“三枚目キャラ”を確立していると言っても過言ではないように思う。

 本作『彼女はキレイだった』もラブコメとあって、“ラブ”の側面には中島の二枚目な一面が、“コメディ”の側面には三枚目な一面が強く表れていた。梨沙を愛だと信じていた時のセリフの発し方や身のこなしは、どれを取っても絵に描いたような二枚目ぶり。対して、ただの部下である愛に少しずつ惹かれていく過程では、ギャグにも見えかねないオーバーな挙動で“ニューヨーク帰りのエリート像”を崩し、愛嬌ある三枚目っぷりで多くの視聴者に驚きと笑いをもたらした。

 しかし、中島が演じた宗介は、単純に二分化できるものでもないかもしれない。この物語は、最初は自信のない愛が情熱を注げるものを見つけ、輝いていく姿を通して、宗介の傲慢な性格も変わっていくさまを描いている。職場の上司としての宗介の顔や、やがて愛に幼馴染みとして見せる顔、そして愛する存在に向ける顔など、これまでの中島の出演作の中でも、最も多くの彼の複雑な表情が見られた作品なのではないだろうか。二枚目と三枚目を自在に操る彼だからこそ為せる、多彩な表現だったように思う。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。

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