歯周病とコロナの関係に新たなリスクの指摘が
新型コロナに感染した歯周病患者は、歯周病がない人よりも重症化するリスクが高いことはご存じだろうか──。集中治療室に収容されるのは3.5倍、人工呼吸器の装着は4.5倍、死亡はなんと約9倍も多いことが、海外の臨床研究で判明したのだ。
歯周病治療の指導者として知られる、元東北大学臨床教授で弘岡歯科医院(スウェーデンデンタルセンター)院長の弘岡秀明氏が解説する。
「この研究は中東のカタールで、新型コロナと診断された患者568人を対象に行なわれました。電子カルテが普及しているカタールでは、こうした分析が可能だったのです。日本では全く注目されませんでしたが、ヨーロッパ歯周病学会(EFP)は、新型コロナの重症化を防ぐためには歯周病治療が必要、と警鐘を鳴らしています」
歯周病が全身の疾患に影響を与えている可能性については、多くの研究が行なわれてきたが、懐疑的な意見もあった。
新型コロナに感染した歯周病患者の死亡リスクは約9倍、という数字は長年の論争に終止符を打つものと言えそうだ。
「歯周病があると、新型コロナウイルスが口腔内から血流を通して簡単に体内に侵入してしまう可能性が指摘されています。また、新型コロナの重症化に関係するサイトカインストーム(免疫の暴走)は、歯周病菌が原因になっているという研究もあります」(弘岡氏)
歯周病は命を左右すると言っても過言ではない。私たちは、認識を変える必要があるだろう。
また、新型コロナの感染拡大によって、一日中マスクを装着するようになった。特に不織布マスクは、呼吸がしづらいので、つい“口呼吸”になる。口呼吸の研究をしている、東京医科歯科大学歯学部の小野卓史教授はこう指摘する。
「口呼吸を続けると、口の周りの筋肉が弱くなって噛み合わせが変わってしまうケースや、口腔内が乾燥する可能性があります。
一般の歯科クリニックからは、口呼吸による口腔内の乾燥が歯周病や虫歯の原因になっている、という声も上がっているので、マスク装着時には口呼吸をしないように注意が必要です」
レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2021年10月8日号