国内

フランスでは4割が「ワクチンパスポートの話でケンカになる」

フランスでは日常のあちこちでパスポートが必要になっている(AFLO)

フランスでは日常のあちこちでパスポートが必要になっている(AFLO)

 コロナワクチンの接種率がようやく先進各国に追いつきつつある日本で、いよいよ「ワクチンパスポート」の本格導入が進んでいる。もともと接種を受ければ接種券に記録が残るし、自治体などでは、すでに独自にパスポートを発行して地域の商店街で割引を受けられる特典を付けるなどの例はある。それに加え、政府は年内にもスマホに記録を残せるQRコード方式のパスポートを発行する検討に入った。

 しかし、話はそう単純ではない。先行するヨーロッパ各国では、パスポート発行は事実上のワクチン強制につながる、接種を受けていない人への差別につながるとして反対論が根強く、抗議デモも起きている。海外事情に詳しい航空ジャーナリストの鳥海高太郎氏は、日本でも課題は多いと指摘する。

「ワクチンを打った人からすれば、安心して生活できる権利を求めるのはわかります。実際に海外ではパスポートを持っているかどうかで様々な規制をかけているわけです。しかし、日本ではワクチン接種は任意であり、仮にパスポートが発行されても、飲食店などはワクチンを打たない人にも配慮しなければならないでしょうね。ニューヨークのように、パスポートを持たない人は店に入れないといった対応はあり得ないと思います」

 接種の有無で特に厳しい規制をかけているのがフランスだ。医療従事者は接種を受けなければ給料ゼロにされるし、学校ではクラスに濃厚接触者が出た場合はパスポートを持つ生徒だけが登校できる。企業によっては、パスポートを持たない社員は出社させないとか、極端なケースでは解雇するといった強い対応もある。

フランスではスマホ用のパスポートも実用化している(PIXTA)

フランスではスマホ用のパスポートも実用化している(PIXTA)

 当然ながら、そこまでの規制があれば、人間関係に軋轢も生まれる。スペイン、フランスを拠点に活動するジャーナリストの宮下洋一氏が語る。

「フランス国内にも、もちろんワクチンを打たないという信条の人はいて、人間関係でも問題が起きているようです。7月にイプソスという調査会社が行った世論調査によると、41%の人が『ワクチンパスポートの話になると緊迫状態や深刻な言い争いになる』と回答し、73%の人が『公共交通機関を利用する際にパスポートを持たない友人がいる場合は利用を諦める』と回答しています。ちなみにスペインでは、知人に対してもワクチンを打ったか打たないかは聞かないようにする雰囲気があります。

 私自身もワクチンを打っていないのですが、それはワクチン本来の目的が見失われているように感じているからです。ワクチンは感染者や重症者を減らすための医療行為だと思いますが、いまや仕事や生活のために打たなければならないものになっていることに違和感を抱いています。パスポートを持っていないと、国境を越えるたびにPCR検査を受けなければならないし、その費用は1回の検査に1万3000円くらいかかりますから大きな出費です。しかし、ワクチンを打つかどうかは個人で決めるべきだと思います。打っていなくても街に出る権利はあるし、病院に行く権利もあるはずです。その権利を国が奪っていいのか、私だけでなく不満を持っている人はたくさんいると思います」

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン