労務管理が難しくなるコロナ後の出社率
――在宅のテレワークと会社への出社以外に、家と会社の中間地点の、いわゆるサテライト型のシェアオフィスも増えてきました。今後は、この3地点をうまく使い分けていく時代になるのでしょうか。
黒田:時間貸しの簡易シェアオフィスはコロナ禍前から増えてはいましたが、皆さんがサテライト型のシェアオフィスに殺到すると、結局そこでも3密な状態になってしまうリスクがあります。ですから、コロナ禍におけるサテライト型のシェアオフィス活性化は、少し限定的なのかなと思っています。
肝心なのは、先々コロナ禍が収束したら、もう一度社員全員をオフィスに戻して100%フルタイム出社でいくのか、あるいは当社の直近の出社率は40%ですが、そうしたレベルをコロナ後も維持していくのか。はたまた、その中間ぐらいを取るのかといったところになってきます。
いずれにしても、コロナ前の状況に比べて多少の非効率さや労務管理の難しさはあっても、そこは工夫してクリアしながら、社員にいかにフレキシブルに働いてもらうかを志向していく企業が増えていくのではないでしょうか。
我々がTHE CAMPUSでライブオフィスを手がけているのも、今後多くの会社によりフレキシブルな働き方を進めていただくにはまず、自分たちがトライアンドエラーすることによって、得られたノウハウをお客様と共有することが重要だと考えているからです。
地域住民も利用できるエリアがあるコクヨの「THE CAMPUS」(同社の黒田英邦社長)
ハードとソフトの多様化を見据えた「働き方改革」
――今後の働き方改革でポイントになるのはどのあたりでしょうか。
黒田:オフィス空間のデザインや設計、レイアウトとかハード的なものだけではなく、福利厚生面や人事制度、評価制度、最近よくいわれるジョブ型制度もそうですが、ソフト面と合わせて、トータルで見た働き方改革が重要だという認識がようやく広まってきたように思います。
たとえば週3日出社で残り2日がリモートワークといった、ハイブリッド型の勤務も定着していくかもしれません。また、ダイバーシティに重きを置けば当然、社員個々人の家庭の事情、たとえば伴侶や親の介護で時間が取られるといった場合、企業は今後、ますます多様な働き方を用意しなければいけません。
だとすれば、画一的で均質的な雇用制度やオフィス空間での働き方ではなく、どんどん多様になっていくはずです。その避けては通れない多様化を、どうコストアップを抑えながら運用していくことができるかが、企業の1つのチャレンジになっていくでしょう。