コクヨが実践する“復業”制度の「20%チャレンジ」

――人事制度や報酬制度といったソフトの観点から、コクヨとしてはどんな働き方改革に取り組んでいますか?

黒田:当社の人事部が発案したユニークな制度に、「20%チャレンジ」というものがあります。昨年から実施して現在2年目に入っていますが、これは換言すれば、社内“複業”制度で、“副業”ではありません。

 たとえば、グーグルさんの「20%ルール」というのが世界的に有名で、これは普段の業務とは異なる研究や勉強を、就業時間の20%の時間を使ってやっていいというルールです。

 こちらは完全に“副業”ですが、社員の健康管理や労務管理上、20%の時間内はどちらになるのかなど、当社ですぐに制度化するには難しい面もあるということで、こうした制度の導入には少々、悩んでいたんです。

 そんな時に、“副業”ではなく、“複業”をしたいという声が社内から上がってきました。やり方としては、“複業”でできそうなプロジェクトを社内で募集し、向こう1年間、就業時間の20%を使って所属部署の仕事とは違う仕事をしてもらうわけです。

 プロジェクトごとに手を挙げた社員とのマッチングは人事部のほうでやっていく。たとえば、入社以来ずっと営業の仕事だった人が、20%の時間を使って商品企画の仕事もしてみたいとか、配属以来ずっとオフィス家具担当だった人が文房具の仕事をするとか。

 ただ、競争倍率がだいたい2倍から3倍ありますので、応募者全員の思いは叶えてあげられませんが、叶った社員は1年間、20%の時間は、新しい仕事を従来からの持ち場の仕事と併せてこなしていくことになります。これがすごく充実して面白いようで、受け入れ側の部署の雰囲気もすごく変わるんです。いうなれば、新しい発想が入ることで活性化されるんですね。

「20%チャレンジの導入でコクヨ自体の組織も活性化されています」と話す黒田社長

「20%チャレンジの導入でコクヨ自体の組織も活性化されています」と話す黒田社長

 当社では敢えて適材適所ではなく、「適所適材」と呼んでいますが、理由は適材適所から入っていくと、その社員の望みを叶えるために新たに仕事を探さないといけなくなるからです。そうではなく、先に新しい仕事を作り、その仕事、プロジェクトごとにやりたい人を探していくのです。

 そのほうが充実して面白い仕事ができる確率も上がりますし、新たな仕事にもチャレンジしたいというモチベーションが高い人を動かすことで、会社にとっても組織が活性化されますから。

 20%の“複業”の仕事の評価は、受け入れ部署の上司が判断して加点していきます。ですから、思いが叶った社員の給料が単純に増えるわけではなく、絶対的な給料の額は基本、変わりません。それでも刺激があって面白味があるからでしょう、この20%チャレンジ導入以降、社員がその話でかなり盛り上がっています。

「みんなのワーク&ライフ開放区」と位置づけられたコクヨのオフィス「THE CAMPUS」(東京・港区)

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