「日本語できるけど、私の見た目が外国人だから、ウソを言っているのではないかと疑われる。コロナ前はみんな優しかったのに、今は厳しい。日本もネパールも助けてくれません」(ネパール系の男性)
店に来ているのは、ギリギリで犯罪だけはしたくない人
都内でも庶民が住む下町のイメージが強い足立区内のナイトクラブにも、やはり外国人が集まっていた。同店で店長を務めるジェイクさん(仮名・40代)が、客の窮状を訴える。
「休業補償金も遅れていますよ。ここに来る外国人はみんな商売をしているから、同じような悩みを持っていて、ここに来てお酒飲んで踊って、悩みを打ち明け合う。違法な営業? そうかもしれませんが、誰かを不幸にしているわけではない」(ジェイクさん)
ジェイクさんは来日15年以上のフィリピン系。英語や日本語だけでなく、スペイン語も話せるため、ジェイクさんを頼ってコロナに困った在日外国人がやってくるのだという。
「お店が闇営業をしているという指摘はその通り。でも、困った人を日本が助けないから、みんなやってくる。いい仕事はないか、極端な話だと、犯罪でもいいから金になることをしたい、という人も来ます。みんなただ単に遊びに来て、お酒を飲んで踊っているわけじゃない。ここにしか居場所がないし、相談できる人がいないから。なんでこの声が届かないのか」(ジェイクさん)
犯罪でもなんでもいいから、当面の生活費が欲しい、という切実な思いを持った客たちに対して、ジェイクさんは次のように説き伏せてきたというが、もはや限界も近いと漏らす。
「みんな仕事(多くは技能実習生)で来て、コロナで仕事が無くなって、寮から逃げ出したりしている。前は、逃げた人にもちゃんとした仕事があったが、今はない。変な仕事しかない。携帯を買って人に売るとか。でもそれをやると日本には2度と来られない、お店にも来られなくなるよと説明していました。でも、もう日本なんかどうでもいいし、国に帰るよりもお金が欲しい、そういう人が増えている。いつ、逮捕されるか心配。みんな早くお金が欲しいんです」(ジェイクさん)
厚生労働省などのサイトをみる限り、コロナ禍に喘ぐ在日外国人の生活を保障するための政策は手厚いようにも思える。しかし、飲食店等への休業補償金と同様に、審査になかなか通らなかったり、給付が決定してから入金までに間が開くなどして、在日外国人たちは、必要なものも切り詰めて暮らさざるを得なくなっている。日本へ技能実習生としてやってきた人には、禁止されても現実には存在するブローカーに借金をしてまで大金を支払い、夢や希望に胸を膨らませて来日した者も多い。だが、思い描いていたのとは大きく違う日本での様々なことに打ちのめされ、とくにコロナ禍を「知らない国」かつ「優しくない国」で過ごし、絶望の中を彷徨い続けている。追い込まれた先にあるのは、やはり「犯罪に走ってしまうこと」だ。
「店に来ているのは、なんとかギリギリ、犯罪だけはしたくないっていう人。みんなで話し合って、辛いけど頑張ろうと言えている人。お店に来なくなったと思ったら、お金のために悪いことして捕まった、という昔のお客もいる。悪いことはよくないけど、悪いことをしないとダメというくらいになった人たちを、なぜ助けてくれないのか」(ジェイクさん)
外国人とか、リッチじゃない日本人はやることも行く場所もない
よく聞かれた「グローバリズム」や「国際化」などといったキーワードも、昨今では、ほとんど注目を浴びなくなった。日本へやってくる外国人は日本に金を落とす存在として、また、人手が足りない業界を支える人材として歓迎されてきたはずだが、現在、彼らが感じているのは、日本から「用済み」のレッテルを貼られている、ということだ。