公表された西九州新幹線の車両デザインやシンボルマークなど[(c)Don Design Associates](時事通信フォト)
また、JR九州も2022年に一部区間で西九州新幹線を開業する予定にしている。それと同時に、武雄温泉駅-長崎駅間の並行在来線区間を上下分離する予定だ。
上下分離を取り入れる鉄道事業者は多いが、線路だけを自治体の所有とするのか? 駅舎まで含めるのか? など、どこまでの資産を自治体の所有物にするかには濃淡がある。
地方の鉄道会社が経営を改善させるための生き残り策は多々ある。少子高齢化・沿線人口の減少といった要因から経営が厳しくなる中で、税負担を軽減する減資という考え方がひとつの選択肢として広がりつつある。
これまで鉄道事業者が減資を選択しなかった背景には、減資による企業のイメージダウンが大きかったことが一因として挙げられる。減資をすれば、他者から経営不振であるとのイメージを抱かれる。大幅に企業イメージがダウンすれば、企業の時価総額や今後の事業計画にも狂いが生じかねない。そうした理由から、できるだけ減資を回避してきた。
2015年に経営危機に直面したシャープは、経営を立て直すために1億円へと減資することを発表。しかし、シャープのような日本を代表するメーカーが中小企業になることに違和感を抱いた財界人は多く、シャープの減資発表は財界から非難を受けた。
結局、シャープは資本金を1億円へと減資することを撤回。資本金を5億円に引き下げたが、それでも大企業として踏みとどまった。
時代とともに減資や減損処理に対するイメージや変わり、理解は得られやすくなった。とはいえ、それは一時的に負担を軽減しただけに過ぎない。売上を回復させなければ、早晩、経営危機に直面する。
いくら公的な使命を帯びている鉄道事業者といえども、赤字を垂れ流し続けることに理解を得られにくい。沿線住民・利用者・沿線自治体から不要の烙印を押されることになれば、廃線は一気に現実味を帯びるだろう。そうならないためにも、早急な売上の回復策を打ち出さなければならない。
緊急事態宣言が全面的に解除された今、事態を打開する次の一手に注目が集まる。