ビジネス

就職希望者の裏アカ調査はもはや常識 「企業の採用活動とSNSチェック」の裏側

就職活動もソーシャルディスタンスで(イメージ、時事通信フォト)

就職活動もソーシャルディスタンスで(イメージ、時事通信フォト)

 SNSに不適切な発言や投稿をして批判が殺到、炎上する事件は今も起きているが、なかでもアルバイトによるそれらの行為が頻発したのは2013年の夏だった。あれ以来、若者は全体的にSNS投稿に慎重になり、複数のアカウントや裏アカウントを使用することでバランスのとれた運用をこころがけてきた。しかし一方で、平穏にSNSライフを楽しんでいるつもりが、就職活動などではプライバシーや自由意志に踏み込んだ働きかけに利用されることもあるらしい。ライターの森鷹久氏が、専門業者に頼らずに実行されている、企業の採用におけるSNS活用についてレポートする。

 * * *
 企業が新入社員の採用をする際に、外部業者などを使い、志願者のSNSをチェックして裏アカまで特定している、という新聞報道が話題になっている。もっとも、こうした話は何年も前から「噂」としては存在したが、当該事業者への取材に成功したこともあり、大々的に報じられたのは初めてのことだ。この報道は、特別な一部の企業に限った話ではなく、一般的なことになっているのだろうか。都内の大手人材会社の人事部に所属する中本遥香さん(仮名・40代)は、筆者の問いにあっけらかんと答える。

「うちの会社でも、外部の業者さんに新入社員のネガティブチェックをお願いするのですが、そこにSNSチェックが加わったのはこの数年のことです。AIを使って、新入希望の学生のアカウントを特定できる、なんて営業をしてくる業者もいて、便利だとは思うのですが、自分がやられたら嫌だな、と正直思います」(中本さん)

採用ツールにもなっているSNSから分かること

 事前に対象の否定的な事柄をチェックするネガティブチェック、という言葉を使うと最近の傾向のように思うかもしれない。しかし実際には、ネットが今日ほど発達する前から、新入社員に対する事前チェックは、大企業などを中心に平然と行われてきた。家柄はしっかりしているのか、本人や家族含め前歴や逮捕歴、前科があるか、などである。警備会社や金融機関などは、今でも犯歴や借金がある人間を採用しない、と言われているが、その裏にはこうした「事前チェック」が存在しているのだ。かつてそれは、関係各所からさまざまな書類を寄せ集めるなどの極めてアナログな作業だったのが、最近はネット、特にSNSでのチェックが欠かせなくなっている。

 これらの事前チェックを請け負う専門の事業者もいるが、業者にリサーチを依頼する、というのは、まだ少ないのが実情のようだ。大部分の事前チェックは、人事部の担当者らによって行われているという。

「エントリーシートの情報を見て、フルネーム、姓や名前、居住地や学校などキーワードを組み合わせてネット検索します。一発でSNSがヒットすると黄色信号で、そこにベラベラとプライベートが書き込まれているのはアウト。よほど優秀な学生さんでない限り、それで『お祈り』ですね」(中本さん)

 SNSでは「#日常ログ」「#vlog」などの投稿が人気だが、就活生がその流行にのってしまうと「今後のご健闘をお祈り申し上げます」と不採用通知を受け取ることになる可能性が高いようだ。

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン