「ゆたかで平和で快適な社会」の犠牲者はどうなるか(イメージ)

ひきこもりを生む原因は本人の問題だけではない(写真はイメージ)

ひきこもりを生む負の連鎖

 最上さんによれば、Yさんがひきこもりになる要因は多くあるという。

「Yさんの家庭のように、三世代が同じ屋根の下で暮らすケースはひと昔前の日本ではよく見られました。ただ、家に資産があり祖父母の力が強すぎると、嫁(母親)は祖父母に気を遣い、我が子に目が向きません。実際、Yさんの妹は「自分たちきょうだいは(両親を)親だと思ったことはない」と話していて、表向きは何の苦労も無いように見えても、本来親から貰うべき愛情を貰っていないと訴える子供は少なくありません。

 また、Yさんのケースのような実業家や会社の社長、教師、弁護士や医師などの士業をしている父親は、常に向上心を持ち高い理想を掲げがちです。家庭においても、常に高いところにいないと気が済まず、我が子の子育てにおいても同様に考える傾向があります。実際には言葉に出して言わなくても、父親のそうした態度が子供を追い詰め、親族など周囲の言葉も、繊細な子ほどプレッシャーを感じて潰れてしまうケースが多いのです」(最上さん・以下同)

 こうした環境は、本来子供の拠り所となる母親へも悪影響を及ぼす。

「批判を覚悟で言えば、こういう自信家な父親は、家庭では自己の価値観を最優先する傾向にある人が多いようです。事業を成功させる面で『折れない心』という意味では良いのでしょうが、こと子育てにおいては、母親(妻)にも大きな負担がかかります。気持ちの強い母親なら言い返したりケンカも出来ますが、気の弱い母親の場合はただ従うしかない。我慢している母親の姿を見続けると、子供は『お母さんに負担をかけちゃいけない』、『いい子でいなければ』と感情を殺すようになり、この状態がこじれると、気が付けば40、50才になってしまうことも珍しくないのです」

「家族療法」とは、どんな治療法なのか。最上さんが話す。

「『家族療法』の一環である傾聴と共感とは、親がひたすら我が子の心に寄り添い、子供の話に耳を傾け、受け止めること。子供の心の奥底にある辛さや悲しさといった感情を理解し、同じ気持ちになろうと努めます。子供が反論したくなるようなことを言っても、まずは黙って聴き、その気持ちやその背後にある本音を理解しようとすることが大切です。

 既に統合失調症や双極性障害といった精神疾患でも、諸外国の主要ガイドラインに出るほど推奨されており、近年海外では、摂食障害や発達障害、犯罪対策、薬物・アルコール問題、認知症を含む高齢者、うつ病の治療法としても実践されてきています」

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