だが過去のデスゲーム作品とは異なる新しさもあるようだ。『韓国映画・ドラマ わたしたちのおしゃべりの記録2014〜2020』(2021年、駒草出版)の共著者でもあるライターの西森路代氏は、『イカゲーム』の新しさについてこのように語る。
「一話ではデスゲームのセオリーにのっとった作り方をしていると思いましたが、二話になって、一度デスゲームに参加した人たちが、日常生活に戻ったシーンを描いていたことが新しいと思いました。参加者がどんな暮らしをしていたのか、なぜこんな過酷なゲームにそれでも参加しないといけないのかがわかるようになっていたことで、社会問題とともにデスゲームが描けるようになっているということが斬新でした」
また世界的な大ヒットへとつながった理由の一つには、社会問題をテーマとして取り入れることによって、国外の視聴者も身近なこととして受け取ることができた点もあるという。西森氏が続ける。
「一度、日常生活に戻ったシーンを見せることで、韓国の格差社会が見えるようになっていました。映画でも韓国の『パラサイト』が席巻したように、格差社会や貧困などのテーマは、どこの地域の人が見ても、身近なことと感じられるのではないでしょうか」
ドラマがヒットすると同時に出演者たちの人気も急上昇するということは、演出という点でもキャラクターを魅力的に見せる工夫があったのではないだろうか。西森氏によれば、「登場人物がどんどん死んでいく」というデスゲームならではの展開も、キャラクターの人気に火をつけたようだ。