叱責された村上は涙を落とした

 辛口評論で知られる宮本氏だが、村上に対してむしろ褒め称えることも多い。

「まずヘラヘラしない。悔しさを顔に出しますよね。打てなかったからといって、道具に当たったりしない。それにグラウンドでも常に声を出し続けている」

 期待値が大きいからこそ、時に、投げかける言葉は辛辣になる。初めて一軍で迎える開幕を前に、宮本氏は村上と約束を交わしていた。

《監督はお前を我慢して使い続けると言っている。お前は19歳で、本来なら鍛えなければならない時期だ。試合にベストのコンディションで臨むのはもちろん大事だけど、与えられたランニング、ウエイトトレーニングのメニューも必ずすべてこなしなさい》

 しかし、一軍の試合にスタメン出場を続けて疲れも蓄積していたのだろう。5月から6月にかけて、メニューをこなしきれない村上がいた。当初は見て見ぬふりをしていた。チーム状況も下位に沈む状態で、村上に4番を任さざるを得ない時期もあった。すると、練習態度に不遜が感じられた。そして広島のマツダスタジアムでの試合後、コーチ室の前で雷を落とした。

「グズグズと言い訳する村上をすべて論破し、説教しました」

 コーチ陣の前で叱責された村上は、涙を落とした。また19年のオールスターが終わると、村上が髪型をアシンメトリーにカットしてきたことがあった。宮本氏は今度は「その頭はなんだ!」と、まるで校則の厳しい学校の教師のように叱った。

「僕はね、村上をヤクルトの4番ではなく、日本の4番にしたかった。言動や練習態度はきっちりさせたかった。村上は球団から期待されて、他の選手よりチャンスをもらっているんだから、厳しくなるのは当たり前。まあ、村上は僕のことは嫌いでしょうね(笑)」

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