6年契約でDeNAへの残留を発表した宮﨑敏郎(時事通信フォト)
“巨人への憧れ”を持つ選手は減っていく?
かつて巨人へ移籍するFA選手は長嶋茂雄監督や原辰徳監督に憧れて入団した面もあったろうが、今後はそのようなケースも減りそうだ。
「2つ目の理由としては、引退後に“巨人ブランド”の威光が効きづらくなっていることです。昔は巨人戦が毎試合、地上波で全国中継されて視聴率20%を取っており、巨人と他の11球団の注目度は段違いでした。実際、巨人のユニフォームでプロ野球人生を終えれば、評論家として引退後の“就職”がしやすかった。どのメディアも巨人とのコネクションを重視していたからです。
しかし、今はあまり関係なくなっている。2006年以降、地上波のナイター中継が減っていき、今では年に数試合しか放送されていない。DeNAの宮崎のように30代前半の選手は巨人戦が毎日放送されていた頃の記憶があるかもしれませんが、これからはその時代を知らない世代がFA権を取得するようになる。今後、巨人への憧れを持つ選手はどんどん減っていくと思います」
FA移籍選手の数年後の扱われ方など“球団の対応”が、巨人への移籍を躊躇させている側面もあるのかもしれない。
「今年の炭谷銀仁朗は本人の希望もあってシーズン途中に楽天へ移籍しましたが、過去には工藤公康や江藤智のように“三顧の礼”で巨人に迎え入れられたのに、数年経つと人的補償で他球団に移籍するFA選手もいた。
丸や炭谷を獲得する時には、長野久義や内海哲也という長年チームを支え、人望も厚いベテラン選手が人的補償でプロテクトされずに移籍している。確かにそれで優勝という結果は残りましたが、生え抜きの流失に失望したファンもいたし、FA移籍で巨人へやってくる選手にとっても余計なプレッシャーがかかります。生え抜きがそのような扱いをされるのですから、FAで来た選手は『いずれ自分はもっと冷たくされる』と考えるでしょう。これが3つ目の理由です」
今では、則本、柳田、山田、宮崎のような大物選手が、あらゆるリスクを取ってまで巨人へ移籍する旨味はなくなっているのではないだろうか。こうした理由から、今後も大物選手の巨人へのFA移籍は減っていくのかもしれない。