スポーツ

仰木監督のDNAを継ぐオリ中嶋聡監督 現役時代はウマが合わなかった

仰木監督とイチロー(時事通信フォト)

仰木監督時代でキャッチャーをしていたのが中嶋聡・現監督(時事通信フォト)

 2年連続の最下位、シーズン途中での監督交代。昨年の惨状から誰がこんな結果を予想できたか。ファンも評論家も「奇跡」と呼ぶオリックス・バファローズのパ・リーグ優勝だが、中嶋聡監督らにとっては“懐かしい景色”だったのかもしれない。この優勝を導いたのは、25年前、名将・仰木彬の薫陶を受け、そのDNAを引き継いだ者たちだった。(全3回の第2回)

 仰木オリックスの記憶と記録は輝かしい。

 1995年1月に発生した阪神・淡路大震災で、日本列島は悲しみに打ちひしがれていた。そこで、「がんばろうKOBE」を合言葉に、戦ったのが当時兵庫県に本拠地を置くオリックスだった。イチローをはじめ、田口壮、ニール、福良淳一、藤井康雄が並ぶ打線に、投手陣は野田浩司、星野伸之、長谷川滋利の先発3本柱が2ケタ勝利をマーク。彼らをリードしたのが中嶋で、見事にリーグ優勝を飾った。翌1996年は巨人を破って日本一に。データに直感を加えた采配は「仰木マジック」と呼ばれた。

 イチロー、田口と共に12球団一の外野と評された優勝メンバーの本西厚博氏はこう振り返る。

「仰木采配の根本は徹底的なデータ野球でした。相手投手との相性で、毎試合、打線を変えていました。中嶋の場合は運もあった。今年はイチロー以来の2年連続首位打者になった吉田が骨折して離脱したが、4番の杉本裕太郎(30)と1番の福田周平(29)が穴を埋めたからね。機動力を使うことに関しては、仰木監督のほうが巧みでした」

 実際、仰木監督は「仰木マジックとよく言われますが、そんなの本当はないんです。あえて言えば確率です」と、データに基づいた采配だったことを明かしている。

 二軍打撃コーチとしてイチローと二人三脚で「振り子打法」を完成させた河村健一郎氏もこう振り返る。

「仰木監督は結果さえ伴えば選手を使ってくれる人でした。イチローは入団当初、首脳陣から“足を生かすためにゴロを打つフォームに変えろ”と言われていました。しかし、長所のレベルスイングを伸ばすべきだと考え、1年間、方針に背いて基礎体力トレーニングだけさせていました。翌年、就任した仰木監督に相談したところ、指導方針を一任してくれました」

 仰木監督は就任1年目の1994年にイチローを一軍に抜擢、シーズン210安打のプロ野球新記録の偉業を達成させた。登録名を本名の鈴木一朗から「誰にでも分かる名前にしたほうがいい」と変えさせたのも仰木監督であり、まさに「イチロー産みの親」である。

 仰木監督にとってのイチローは、中嶋氏にとっての「ラオウ」だろう。

 二軍監督時代から中嶋氏が長距離砲としての資質を高く評価していた「ラオウ」こと杉本は今季、4番に定着。自己最多の32本塁打で初のタイトルを獲得した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン