もっとも、いかに世界的タブロイド紙とはいえ、子供の人権や安全まで脅かす報道には慎重だ。最近の例では、「スター・ウォーズ」でキャリー・フィッシャーとの母娘共演が話題になったビリー・ラード(29)の1歳になる息子や、「アナと雪の女王」のアナ役で有名なクリスティン・ベル(41)、テレビドラマ「ゴシップガール」のブレイク・ライヴリー(34)の子供たちもパパラッチの餌食にされた。パパラッチの撮った写真が公開されてしまったのだが、さすがに子供たちの顔にはボカシが入っている。
クルーニー夫妻の抗議はもっともだが、実は夫妻はデイリー・メールに深い遺恨があり、それも背景にありそうだ。同紙はクルーニーとアマルさんが結婚する際に、「アマルさんの母親はトリポリ出身のスンニ派イスラム教徒の娘で、今回の結婚に真っ向から反対している」と報道した。後に誤報だと判明したが、クルーニー夫妻が訴えたわけでもなかったので、今に至るまで正式に訂正も謝罪もしていない。
もちろんアメリカではプライバシー権は大事にされるし、盗撮は犯罪に問われる可能性もある。しかし、ハリウッド市警関係者によれば、「パパラッチはニンジャのように神出鬼没。掲載したメディアも写真の出どころは明かさない。子供が誘拐されたり、身体的な危害を加えられたりしない限り、立件することは難しい。なにより、一般市民はセレブの裏話や写真が大好きで、ゴシップ・メディアは人気がある」というのが実情のようで、芸能人たちの旗色は悪い。
ジョージ・クルーニーは、ジュリア・ロバーツとの新作ラブコメディ、「チケット・トゥ・パラダイス」(2022年公開予定)が注目されている。メディアと本気でケンカするにはタイミングも悪いから、デイリー・メールを深追いすることはなさそうだ。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)