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新・朝ドラ『カムカムエヴリバディ』はなぜ「至福の15分」を創り出せているのか

英語力が評価されている上白石萌音(写真/EPA=時事)

英語力や歌唱力にも定評がある上白石萌音(写真/EPA=時事)

●贅沢に取り込まれた季節感と生活感

 朝ドラでは地域性や季節感をいかに演出できるかが一つのポイント。しかしそのあたり最近の作品では薄まってきていた。しかし今作は違う。「たちばな」の和菓子が季節によって変化していく。おはぎ、月見団子、小豆の収穫にお汁粉、餅つき。そして生活の中でも晴れ着に浴衣、彼岸花にコスモス。富田林や岡山後楽園などロケ地の選択も効果的。つまり衣食住の中に年中行事や祭などをさりげなく使って、季節感と生活感をぐっと際立たせている。

●煙草の箱ひとつから、世界情勢の変化を見せるうまさ

 細部に重要な変化や意味をしのばせる、大人の演出で発見の楽しさが。祖父の煙草を買いにきた安子に、煙草屋のおばちゃんは黙って祖父の好み「CHERRY」を出す。それだけで町内の人間関係が読み取れる。しばらくすると箱に「櫻」の漢字が。戦況の悪化、英米との対立を暗黙のうちに物語らせる。

●主題歌を安子の心の表現として挿入する、びっくり演出

 第8回(10日)、稔を訪ねて1人大阪へ向かった安子。しかし結果として見合いの話を言えずに岡山へと帰る途上、安子は涙を流す。そこへいきなり主題歌「アルデバラン」が挿入され安子の気持ちを表現するように響いた。冒頭に主題歌が流れなかったのは、この演出のためなのかと膝を打つ。何という柔軟でオシャレな演出と喝采。

 ロケ地から生活風俗まで丁寧に考え抜かれ、役者たちも抑制が効いている。遊び心があり自由度が高く上質な演出で、バツグンの滑り出しを見せた『カムカムエヴリバディ』。今後も過剰な説明やドタバタで笑いをとろうとしたりせず、絶えず引き算の抑制が効いた美しい演出によって心にしみる大人のドラマを続けていってほしい。「三代の女性の100年物語」というだけに、ヒロインをいかに上手に自然にバトンタッチさせていくのかも大きな見所となるでしょう。

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