芸能

新・朝ドラ『カムカムエヴリバディ』はなぜ「至福の15分」を創り出せているのか

番組公式HPより

番組公式HPより

 滑り出しは至って順調のようである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が朝ドラ新作を分析した。

 * * *
 11月1日から始まったNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』も2週間が過ぎようとしています。「心を掴まれた」という人が続出しているのも、なるほど。独特のドラマ世界をまるで美しい詩のように見せてくれて、うっとりしているうちに過ぎる「至福の15分」だから。

 まず注目されているのが「初めて」の要素。朝ドラ史上初の「3人ヒロインによる100年物語」として上白石萌音、深津絵里、川栄李奈の3人が抜擢されました。和菓子屋「たちばな」に生まれラジオ英語講座と共に歩んだ安子(上白石)、安子の娘・るい(深津)、るいの娘・ひなた(川栄)。NHK英語講座に関わる人や出来事を通して時代の変化を描くのかと思ったら、いやいやどうして。

 毎日、人間ドラマをしっかりと見せてくれる出色の演出に感服です。この「至福の15分」を創り出している要素とは--。

●説明しない

 セリフやナレーションなど言葉でくだくだと説明をしない。従来の朝ドラなら時代背景や人物関係を言葉で説明しそうなところを、極力控えている。だからこそ、視聴者も「意味」を追うのではなくドラマ世界にそのままに肌で浸かって五感で味わうことができる。

●映像に語らせていく術

 言葉で説明しない分、効果的に映像を活用。その一例が失踪した安子の兄・算太(濱田岳)がどこで何をしていたのかを無声映画的モノクロ映像によって伝えた回。都会のダンスホール、踊り子や算太のダンスと、たった数分間まるで別の映画を見たような映像を挿入する術がシャレている。

●英語はあくまで中心でなく「道具」

 下手をすればテーマの「英語」に寄りかかって英語講座のエピソードでまとめる物語となりそうなところ。しかしこのドラマは英語を「人と人をつなぐ接着剤」、つまり道具として使いこなし、むしろ人物の方をくっきりと浮き上がらせていく。

 例えば大学生の雉真稔(松村北斗)と安子をつなぐ道具としての英語。遠距離で心を響かせあう若い二人の、近づきたいけれど距離もある微妙な恋を叙情的に描いていく道具として手紙で英語の歌詞をやりとりしたり英語のセリフを効果的に活用。

●絶妙なバランスの配役

 役者たちがキラキラと輝いている。中でも稔を演じる松村北斗は派手な演技でなく抑制が効いていて、大店のぼっちゃんとしての気品と自信と控えめさ、さりげない優しさが滲み出し日本中の視聴者の胸をキュンとさせている。

 対する安子役の上白石萌音は、少女らしい可愛らしさと女としての哀しみを浮き彫りにしていく。また稔の弟・勇を演じる村上虹郎、父・千吉を演じる段田安則、安子の母の西田尚美、幼なじみ・きぬ役の小野花梨、喫茶店マスターの世良公則……絶妙なバランスで役者を配置し、味わいを出している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
2才の誕生日を迎えた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
【9月6日で19才に】悠仁さま、40年ぶりの成年式へ 御料牧場、小学校の行事、初海外のブータン、伊勢新宮をご参拝、部活動…歩まれてきた19年を振り返る 
女性セブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン