「安物商売」からの脱却がカギ
難しいのはノートより大きなセダン/ハッチバックモデルで日本のユーザーへの適合性が高そうなモデルがグローバルで見当たらないこと。今の時代、5ナンバーにこだわる必要はまったくないが、フリート(レンタカーや法人ユーザー)向けの安手のモデルを持ってきたところで売れる見込みはなく、ブランドイメージ的にもマイナスになりかねない。
日産はカルロス・ゴーン元会長の追放劇の前から「安物商売を続けていてもジリ貧になるだけ」(西川廣人元社長)と、高付加価値路線に転換する意思を示していた。その後の混乱の中でそのプランを放棄していなければ、今はまだ存在しない魅力的な乗用モデルが内々に開発されているかもしれないので、そこに期待したい。
今後も日産は当面厳しい戦いが続くであろうが、量販車、バッテリーEVを問わず、ユーザーに「あれ、これはちょっといいかも」とチラッとでも思わせるような新商品を継続的に出せれば、それの積み重ねの果てにブランドアイデンティティの復興をみる日が来るだろう。だが、それを実際に成し遂げるのは簡単ではない。
幸いにして日産はかつて経営難に陥ったときのような、社内の権力抗争でエネルギーを自己消費してしまうという雰囲気ではないように見受けられる。ライバルを外に求める機運さえあれば、内田誠社長が言う「日産のポテンシャルはこんなものではない」というパワーを有効に発揮できるだろう。
クルマという商品は何かをやると決意してからそれが形になるまでに長い時間を要する我慢のビジネス。今の苦境を何とかしのぎつつ、日産が今後どんな決め手を出してくるのか、興味が尽きないところだ。
今年6月に発売し販売好調なノートオーラ