10月7日に起きた地震について説明する気象庁の担当者(時事通信フォト)
首都圏での大地震リスク
10月7日22時41分、首都圏を大きな地震が襲い、東京都足立区や埼玉県川口市などでは震度5強を観測した。東京23区内で震度5強の揺れを観測したのは、東日本大震災以来10年ぶりのことだった。
電気や水道などのライフラインが打撃を受け、エレベーターは約7万5000台が停止して多くの人が閉じ込められ、マンホールからは水が噴き出した。鉄道各社が運転を見合わせたことで、帰宅困難者が大量に出るなど、首都圏は一時パニックに陥った。
「地殻変動の異変により、大地震につながる“ストレス”がたまってしまったエリアが、日本各地に何箇所もできてしまったと推測されます。なかでも危険だと考えられるのが、千葉市や市川市(共に千葉県)の周辺でした。10月7日の地震の震源地は千葉県北西部だったので、その“ストレス”の一環と考えられます」(高橋さん)
近い将来、さらに大規模な地震が首都圏を襲う可能性もあるという。東海大学海洋研究所の地震予知・火山津波研究部門客員教授の長尾年恭さんが語る。
「ある地域で地震が少なくなる現象を『静穏化』といい、その期間が長いほど、地震が発生したときの規模は大きくなると考えられています。関東地方は、昨年から静穏化が起きていた地域が多いので危惧していたのですが、10月7日に発生した地震はマグニチュード(以下、M)5.9と、思ったより大きくなかった。これはまだまだ巨大地震が起きる余地を残していることを示していて、M7クラスの地震が起こったとしてもおかしくはありません」
10月7日の地震は、活断層がズレることで発生する「直下型地震」だった。前出の島村さんはこう懸念する。
「プレートのひずみが引き起こす海溝型地震とは違い、直下型地震は人が住んでいる場所の真下で発生します。そのため、それほど大きな地震でなくとも、被害は非常に大きくなる。直下型地震だった阪神・淡路大震災はM7.3で、地震の規模そのものは、東日本大震災の2000分の1程度でした。にもかかわらず、6000人以上が命を落とした。
10月7日の地震では被害が抑えられましたが、今後、M7クラスが発生すれば、人命にかかわる地震になる可能性は高い」
地殻変動の異変によってリスクが増したのは、首都圏だけではない。
前出の長尾さんが危険視するのは、能登半島(石川県)の先端部にあたる地域だ。9月16日、このエリアを震源とする震度5弱の地震があり、10月中にも震度3が3回も観測された。
「GPSによる地殻変動のデータで、ここ最近、能登半島周辺の地面がどんどん『隆起』していることが判明しています。火山がない地域でこれほど隆起するのは珍しく、最近頻発している地震との関連が指摘されています。この地域でこれまでに起きた地震は“前震”の可能性があり、今後さらに大きな地震が起こるかもしれません」(長尾さん)