岸田政権の「10万円給付」の線引きを踏まえると、あまりにちぐはぐな対応である。新型コロナによって生活苦に直面した人を支援するという名目で、今回の経済対策には「住民税非課税世帯への10万円給付」が盛り込まれたが、年収の少ないワーキングプア層に、この給付が行き届くのかについては疑問の声があがっている。
「住民税非課税世帯には、公的年金等控除が使えることで課税所得が抑えられる年金受給世代が多く含まれるとされ、若い世代で給与所得がある人で対象になるケースは限定的になると考えられるのです」(同前)
住民税の課税・非課税の線引きは自治体や家族構成によって変わってくるが、たとえば東京・港区のHPでは、非課税となる前年の収入(合計所得が45万円以下)の具体的水準として「アルバイトやパートの給与収入が100万円以下」「65歳以上で年金受給のみの人は、年金収入が155万円以下」などと列記されている。年金受給者よりも、現役世代のほうが収入の基準が厳しくなるのだ。
「つまり、『年収100万円』を少し超える程度の単身のワーキングプア層のなかには、今回の10万円給付の対象にならない人たちが出てくるわけです。国会議員が自分たちの『月100万円』の非課税の収入は見直しを先送りにしておきながら、年収100万円そこそこの若者を見捨てるような給付策の打ち出すことが、幅広い支持を得られるのでしょうか」(同前)
国会で与野党がどのような議論を展開するのか、国民はきちんと監視しておく必要がある。