国内

経口治療薬モルヌピラビルの登場 コロナは「ただの風邪」になるのか

(写真/アフロ)

メルクの「モルヌピラビル」。予防薬としての治験も進められている(写真/アフロ)

 変異か所は桁違いに多く、過去最多。感染力が強く、ワクチンをすり抜ける──。それだけ聞いて、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」について、恐怖を感じる人もいるだろう。しかし、実際には感染しても症状が軽いといわれており、それほど危険ではないと見られているのだ。

 今後、オミクロン株が普通の風邪ウイルスと同じように“ヒトと共生する”未来も十分に考えられる現状だが、さらなる希望をもたらすのは、ロシアかぜやスペインかぜが流行した時代と違って、人類には医学の進歩という武器があることだ。

 12月3日、米製薬大手メルクの日本法人は、新型コロナの経口治療薬「モルヌピラビル」の製造販売承認申請を行った。

 モルヌピラビルは、ウイルスの増殖に必要な酵素の働きを阻害する抗ウイルス薬である。日米などで行った治験では、軽症や中等症の患者の入院・死亡リスクを50%低下させ、投与した人の死亡はゼロだった。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはこう話す。

「岸田首相は新型コロナののみ薬を2021年内に実用化する方針で、モルヌピラビルは早期承認が見込まれています。実際に日本政府とメルクは、薬事承認を前提に160万回分のモルヌピラビルの供給を受けることで合意しています」

 これまでの新型コロナ対策の難題の1つは治療薬がなかったことだ。のみ薬で治療できるようになれば、新型コロナはますます“風邪やインフルエンザ程度の恐るるに足らぬ感染症”に近づいていく。

「モルヌピラビルはオミクロン株への有効性も高いとされます。軽症でも使用できるよう承認されれば、インフルエンザ薬のノイラミニダーゼ阻害薬のように、感染初期の治療薬として効果を発揮する可能性がある」(一石さん)

 ほかの製薬大手もメルクに続けとばかり、経口治療薬の開発を進めている。

「アメリカのファイザー、スイスのロシュなどが開発を進めています。開発競争のなかでいろいろな経口治療薬が出てくると、より質の高い薬が市場に出回る可能性があります。この先はのみ薬がワクチンに次ぐゲームチェンジャーになるでしょう」(一石さん)

 多くの人々を苦しめた新型コロナがただの風邪になる──楽観視されるクリスマス・ギフトは本当に届くのだろうか。

※女性セブン2022年1月1日号

海外からの帰国者の水際対策が強化された(共同通信社)

成田空港では海外からの帰国者の水際対策が強化された(共同通信社)

関連キーワード

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン