国内

アベノマスク希望者への配送料が10億円 一括廃棄を決断できなかったのはなぜか

倉庫に保管されている大量の布マスク(時事通信フォト)

倉庫に保管されている大量の布マスク(時事通信フォト)

 釈然としない判断が続く今日この頃である。コラムニストの石原壮一郎氏が例の布マスクについて考察した。

 * * *
 誰が考えても、まとめて廃棄するのが賢明な選択です。令和を代表する愚策と言っても過言ではない「アベノマスク」は、どこまで失敗を重ね続ければ気が済むのでしょうか。お役所が頭をひねればひねるほど、見ている側が首をひねる事態が重なっていきます。

 8000万枚を超える大量の在庫があるという「アベノマスク」。保管費用は去年3月までで6億円と報じられました。それから約1年が経ち、保管費用のトータルは単純計算で軽く10億円を超えているでしょう。去年の暮れに岸田首相が「年度末を目途に廃棄する」という方針を立てたのは、いろいろしがらみもある中で勇気ある決断でした。

 しかし、そこからまた迷走が始まります。「廃棄する前に希望する自治体や個人に配布します」としたばっかりに、厚生労働省は余計な仕事が増えてしまいました。欲しいという応募がたくさんあったのは何よりですが、希望者への配送料が10億円に上るという試算が発表されます。そのまま捨てれば6000万円ぐらいで済むらしいのに。

「ただならもらってもいい」ぐらいの気持ちなのか面白半分なのか作った人への忖度なのか、申し込んだ側の動機はわかりません。それはさておき、このままだと感染防止には役に立たないと烙印が押されているマスクに、また10億円が費やされてしまいます。

 なぜ政府は「ごちゃごちゃやってないで一括廃棄」という決断ができないのか。いや、政府に限らず、あちこちの役所や会社や家庭でも、この手の不合理な選択が繰り返されています。呆れた判断をしてしまうのは、けっして他人ごとではありません。「アベノマスクの一括廃棄」を決断できない背景には「3つの病」が潜んでいます。

 もっとも根深いのは「批判に怯えるという病」。担当者だって組織の偉い人だって、さっさと廃棄したほうがいいことはわかっていたはず。しかし、廃棄すると言ったら、たちまち「ものを無駄にするな!」「税金で作ったものを捨てるとは何事だ!」という批判が大量に集まるでしょう。こっそり保管しておくマイナスは目に見えづらいですが、批判ははっきり見えてしまいます。

 そこに重なってくるのが「責任を取りたくないという病」。余分なコストがかかっても自分は責任を取る必要がない立場だけど、批判を受けたら自分の責任になる。そういう状況で、批判をはねのけて総合的にメリットが大きい選択をできる人は、まずいません。おそらく当事者は、迷った末に苦渋の選択をしている訳ではなく、息を吸って吐くように批判を受けない方法、責任を取らずに済む方法を選んでいるでしょう。

 災害が起きたとき、避難所に集まった人たちがお腹をすかせているのに、届けられた弁当やおにぎりが配られないという事態がしばしば起きます。理由は「全員に平等に配るためには数が足りないから」。そのまま賞味期限が過ぎてしまったケースもあったとか。これも「批判に怯えるという病」と「責任を取りたくないという病」が骨身に染み付いているが故の愚行です。目に見えやすい批判や責任しか頭にないのでしょう。

関連記事

トピックス

『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《TOKIO・国分太一が無期限活動休止》「演者とスタッフは“独特の距離感”だった」関係者が明かす『鉄腕DASH』現場の“特殊な事情”
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《スタッフに写真おねだりか》TOKIO・国分太一は「コンプライアンス上の問題行為が複数あった」…日本テレビに問い合わせた結果
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
《日テレで緊急会見の意味は》TOKIO国分太一がコンプラ違反で活動休止へ 「番組降板」「副社長自らスキャンダル」の衝撃
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、今年秋の園遊会に“最速デビュー”の可能性 紀子さまの「露出を増やしたい」との思いも影響か
女性セブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン