岡山では今でもスター(2014年岡山放送局時代の和久田アナと高校野球解説者たち。右上が綾野氏)
ルールも知らなかった
東京大学を卒業して2011年の春にNHKに入局した和久田アナは、2か月間のアナウンサー専門研修を経て、5月30日に岡山支局に着任した。出身地の神奈川県からは遠く離れた地で、アナウンサーとしての第一歩を踏み出した。
NHK岡山時代、支局のスタッフブログで〈岡山の人にとっての“桃”や“マスカット”のように、みなさんに親しまれる存在になるよう頑張ります〉と意気込んだ彼女は、すぐに岡山県民の注目の的になった。岡山市・奉還町商店街のある店員が言う。
「岡山に新人の女性アナウンサーが来るのは、当時は久しぶりだったし、しかもまあ、えらい綺麗だから、デビューした時は商店街でも話題になりました。
このあたりはNHKも近いしね。和久田アナが出演していた夕方のニュース番組『もぎたて!』は毎日観ていました」
配属からひと月半あまり後の7月23日。ラジオ放送の気象情報などを担当してきた和久田アナは、高校野球・岡山大会の準々決勝2日目の第一試合で、実況アナウンサーとして「初鳴き」(初めて放送に出ること)をする。
隣に座ったのは、NHK岡山放送局の高校野球放送で34年間にわたって解説を行なう綾野富夫氏だった。
「和久田さんはとても緊張していたようですが、いざ試合が始まると、初めてとは思えないくらい器用にこなしていました。
入社からわずか4か月の新人アナが実況を担当するのは異例のことです。しかも1年以内にスムーズに実況をできるレベルに達した。そんなアナウンサーは、和久田さん以外に記憶にありません」(綾野氏)
このデビューの裏には、知られざる努力があった。