食事中以外は歯と歯は離す
奥歯をこすり合わせるような歯ぎしりは、好ましい歯ぎしりとは言えない。
「悪い歯ぎしりの大きな要因の1つが、かみ合わせの悪さです。かみ合わせが正常であれば、歯ぎしりをしたときの圧力は犬歯を中心にかかり、奥歯に力がかかることを防ぐことができます。一方、かみ合わせが悪いと、奥歯だけに圧力がかかったり、あごを痛めたりするのです。
一見、歯並びがよくても、かみ合わせは悪いことがあるので注意してほしい。かみ合わせは見た目の歯並びとは別ものなのです。
試しに、上下の歯を軽く合わせた状態で、下あごを左右に動かしてみてください。このとき、犬歯ではなく奥歯が強くぶつかり合うようなら、かみ合わせが悪い可能性が高く、悪い歯ぎしりをしているかもしれません」
奥歯は、上下にかかる力には強いが、左右にかかる力には弱いため、奥歯をこすり合わせる「悪い歯ぎしり」を繰り返していると、歯が異様にすり減ったり、知覚過敏を起こしたりと、さまざまな口腔トラブルを招く。
「悪い歯ぎしりや食いしばりをしすぎると、噛む筋肉も酷使することになるため、それが片頭痛や肩こりにつながる人もいます」
本来、日中で上下の歯が触れ合っていてよいのは、食事の時間のみ。平均して、1日あたりわずか17.5分間だ。それ以外は、上下の歯の間には1〜2mmほどの隙間があるのが正常だ。
宮本さんによれば、起きている間に無意識に歯を触れ合わせてしまう「TCH(歯列接触癖)」は、睡眠中の歯ぎしりよりもやっかいだという。
「睡眠中の歯ぎしりは、力の制御ができていないため、50〜100kgもの圧力がかかっているといわれています。その分筋肉が疲れるので、睡眠中に歯ぎしりをしている時間は平均して1.4分間です。
一方、TCHは無意識に軽い力で噛んでいるので、平均して1日157.2分間にもなる。その負担は、強く食いしばるような歯ぎしりの20倍以上です。
TCHが多い人は、顎関節症になるリスクが2倍になるという報告もあります」(宮本さん・以下同)
TCHが多いと、「歯を食いしばること」そのものがクセになってしまい、特にストレスを感じていなくても、歯を触れ合わせたり、強く食いしばるようになってしまう。睡眠中の歯ぎしりも起こりやすくなり、常に口やあご周りの筋トレをしているような状態になる。
すると、顔のゆがみ、ほおのだるさやえら張りなどが起こる。
そして、さらにかみ合わせが悪くなり、悪い歯ぎしりや食いしばりが習慣になってしまうのだ。
※女性セブン2022年2月17・24日号